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「いえ、オレは竈門です。実は、炎柱の煉獄さんにお聞きしたいことがあって」
炭治郎が杏寿郎に尋ねたかったのは、竈門家に代々受け継がれている“ヒノカミ神楽”のことだ。
“ヒノカミ神楽”は、なぜ鬼殺の呼吸として竈門家に伝わっていたのか、そして何の呼吸なのか、手掛かりだけでも掴みたかった。
そこで、まず炭治郎が相談したのは、蟲柱・胡蝶しのぶだった。
だが、彼女は眉を下げ
「詳しくはわからないの」
と言う回答だった。
ただ一つわかっていることは、火の呼吸というものは存在しない。
でも、“火”は無いが“炎”の呼吸は存在とのこと。
ならば、炎の呼吸の使い手に聞けば何か解るのでは。
ということになり、胡蝶しのぶが煉獄杏寿郎に連絡をつけて貰ったのだ。
これが、炭治郎が“無限列車”に赴いた経緯だ。
杏寿郎は、炭治郎の話を相槌を打って聞いていたが、聞き終えると
「うむ、そういうことか!」
力強く頷き、
「だが知らん!“ヒノカミ神楽”と言う言葉も初耳だ!竈門少年が父から受け継いだ神楽を戦いに活かせたのは実にめでたいが、この話はこれでお終いだな!」
炭治郎は
「ええ、もう少し何か……」
と慌てていたが、杏寿郎は別の話題に話を切り替えていく。
「炎の呼吸は歴史が古い。そして、炎と水の剣士はどの時代も必ず柱に入っていた。――炎・水・風・岩・雷が基本の呼吸だ。他の呼吸はそれらから枝分かれして出来たもの。良い例が、甘露寺の恋の呼吸、時透の霞の呼吸、星龍の龍の呼吸に、栗花落の桜の呼吸だな」
杏寿郎は
「栗花落は、“花”から“桜”に派生させるとは大した者だ!」
と言って、大きく笑った。
まあ、奏多は無限列車に乗ってねえんだけどな。
「竈門少年、君の刀は何色だ?」
「えっと、オレの刀は黒刀です」
「黒刀か!それはきついな!」
「きついんですか?」
「うむ!黒刀の剣士が柱になったのを見たことがない!更には、どの系統の呼吸を極まればいいのか解らないと聞く!」
炭治郎は
「そうなのか……」
と肩を落とすと同時に、ガタンと地面が揺れ、列車が動き出す。
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