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俺は加速し跳び込んだ各車内で、蠢く肉塊へ向かって刀を振るう。
「龍の呼吸 伍ノ型 流星群!龍の呼吸 壱ノ型 龍の舞!龍の呼吸 肆ノ型 逆鱗!」
技を放ち、ボタボタと肉塊を斬るが、すぐに車両に吸収されてしまう。
その時、凄まじい断末魔が車両全体を揺らした。
現在の魘夢の体は列車そのものだ。
彼がのた打ち回ればその分、列車全体も跳ねるのだ。
このままでは、列車が脱線して乗客の命が失われてしまう。
なので、俺は車両の窓から外へ飛び出し、刀を振るう。
「龍の呼吸 弐ノ型 竜巻」
俺は竜巻を放った。
その斬撃は前方車両四両の頭上に降り注ぎ、斬撃の重力で動きを停止させる。
だが列車頭上のへこみ具合が凄まじい。
(請求されなきゃいいけど…。)
と思っていると、後方四両も完全に動きを停止していた。
どうやら、杏寿郎が停止させたようだ。
俺は安堵の息を吐くと、前方から
「炭治郎ぉぉおおっ!」
と善逸の叫び声が届く。
俺は納刀し、声が発した方向に走り出した。
炭治郎のたちの元に到着すると、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら片膝を突けている善逸と、腹を抑えて片膝を突けている炭治郎の姿。
炭治郎は、苦しそうにしながらも息を整えようとしている。
「誠さんんんっ!炭治郎のお腹から血が出てるよぉぉおっ!炭治郎、死んじゃうよおぉぉおッ!」
「いや、死にはしないから」
と内心で呟きながら炭治郎の傷口を見ると、鋭利な物で刺されたのか血管が損傷している。
それに呼吸を見る限り、炭治郎は“全集中・常中”を習得している。
ちなみに伊之助は、炭治郎と善逸に頼まれ、一足先に乗客の避難に向かったそうだ。
「炭治郎。もっと集中して呼吸の精度を上げて、体の隅々まで神経を行き渡せろ。――破れた血管があるはずだ、そこを呼吸で止血するんだ」
その言葉に、炭治郎はふぅと息を吐く。
鋭い痛みの中呼吸を集中させ、無事止血することに成功したのだ。
「よくやった。取り敢えず止血は出来たが、激しい行動は厳禁だ。傷口が開く」
俺の話を聞いた善逸は安堵の息を吐き、後方から現れた人影が大きな声を上げる。
「ふむ。竈門少年は、全集中・常中で止血ができるようだな、感心関心!常中は柱への第一歩だからな!柱までは、一万歩あるかも知れないがな!」
炭治郎は
「はい、頑張ります」
と呟き、杏寿郎は言葉を続ける。
「それに呼吸を極まれば様々なことが出来るようになる。何でも出来るわけではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる!」
また杏寿郎の話によると、後方車両四両の乗客は無事だ。
俺も
「前方は無事です」
と返すと、杏寿郎は
「うむ!」
と頷く。
「皆無事だ!怪我人は大勢だが、命に別条は無い!竈門少年たちはもう無理はせず――」
杏寿郎の言葉を遮るように、ドォン、と地面を抉る凄まじい衝撃音が響く。
杏寿郎の数メートル前に着地したのは、右瞳に“上弦”、左瞳に“参”と刻んでいる鬼。
――十二鬼月、上弦の参だ。
上弦がどうしてここに?
それに何故今…なんだ…。
という疑問が上がるが、それ以上に、この場の圧迫感が凄まじい。
そして上弦の参は、炭治郎たち目掛けて加速する。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!」
「龍の呼吸 肆ノ型 逆鱗!」
俺と杏寿郎は瞬時に抜剣し、型を繰り出す。
杏寿郎は円を描くように炎の斬撃を、楓は下から上に描く円状の斬撃を放ち、炭治郎たちに迫っていた上弦の参の両腕を切断し吹き飛ばした。
上弦の参は、ズサァァ、と後退する。
そして、両腕もすぐに再生させる。
さすが上弦と言うべきか、再生速度が異常だ。
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