第二話 無限列車編

8/14
前へ
/89ページ
次へ
「…そうか…。」 術式展開 破壊殺・羅針。   「鬼にならないなら殺す」   猗窩座は足元に雪結晶の陣を出現させると、凄まじい速度で俺と杏寿郎に迫る。   「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!」   「龍の呼吸 壱ノ型 龍の舞!」   型を繰り出し、杏寿郎が地上から迫り、俺は地を踏み込んで空に躍り出る。 俺と杏寿郎は地と空から猗窩座の頸を狙ったのだ。 地を踏み跳び上がった猗窩座は、俺の一閃を拳で往なすと、着地した瞬間に杏寿郎の一撃を弾き飛ばす。 その圧倒的な実力は、下弦の力量を遥かに上回る。 そして猗窩座は、興奮で頬を緩めながら地を踏み跳んだ。   「今まで殺してきた柱たちの中に、炎・龍はいなかったな。そして、オレの誘いに頷く者もいなかった。なぜだろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる。選ばれた者しか鬼にはなれないというのに。…素晴らしき才能を持つ者が醜く衰えてゆく。オレはつらい、耐えられない、死んでくれ杏寿郎、誠!若く強いまま…!」   破壊殺・空式・乱。   「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり!」   「龍の呼吸 弐ノ型 竜巻!」   猗窩座が拳を虚空に打つと、打撃は直線的に杏寿郎と俺を襲う。 初弾の打撃は杏寿郎が炎の斬撃で相殺させ、遅れて襲う打撃は、俺が周囲に放った斬撃が相殺させる。 呼吸の二重防御だ。   「龍の呼吸 伍ノ型 逆鱗!」   俺は十八連撃で猗窩座の急所を狙い放ったが、猗窩座は空中で身を捻り体勢を整え斬撃を拳で弾き落とし着地する。 柔軟さ、強さ、反射速度。 どれを取っても通常の鬼の比ではない。   「こんなにも美しい斬撃は初めてだぞ、誠ォ!やはり、お前は鬼になるべきだ!」   猗窩座は楽しそうに、嬉しそうに声を上げる。 まるでそれは、自身の好敵手を見つけたようだ。 俺はその言葉を聞き額に青筋を浮かべる。   「なるわけないだろッ!」    俺は声を荒げ、刀を構えた。   「龍の呼吸 弐ノ型 竜巻!」   刀を振るうと、無数の斬撃が猗窩座の頭上から降り注ぐが、猗窩座は致命傷になる斬撃だけを拳で弾き飛ばす。   「鬼になれば、この斬撃の致命傷以外は掠り傷みたいなものだ」    猗窩座は 「その証拠にほらな」 と言って、瞬く間に傷が治る部位を指差す。 そう、俺の斬撃で傷付いた部位が、鬼の回復力で塞がっていたのだ。 こうなっては、距離を取って攻防をしていたらジリ貧だ。 近距離で戦うしかない。 俺が杏寿郎と目を合わせると、杏寿郎も 「承知」 と視線で頷いていた。 俺達は猗窩座と間合いを詰め鋭い剣技を繰り出すが、猗窩座は喜々とした表情でそれを拳で往なすか、弾き落としている。 そして、猗窩座と一瞬一瞬の攻防は、少しでも反応が遅れれば致命傷になる。   「杏寿郎、誠、素晴らしい剣技だ!だが、鬼にならなければこの剣技も失われていくのだ!お前たちは悲しくないのか!」   「悲しい感情などない!オレの心の炎意思は、きっと誰かが受け継いでくれる!」   そう言った杏寿郎の顔は、剣技の速度に慣れた猗窩座の拳が徐々に掠り、額、頬、左目が打たれ潰れ赤い鮮血を流している。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加