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スターティンググリッド。
2ndグリッドには、昨日のレース1と同様隼人兄がいる。
エンジンをかけ、スタートの瞬間を待つ。
隣のエキゾーストがうるさいと思うのは意識しすぎているせいか。
自分を落ち着かせるために一瞬目を閉じ開いた先。
ポールポジションの自分の前に一台のバイクがいる。
いるはずのない、ゼッケン18の青いバイク。
嘘だろ!
それに気を取られてスタートが出遅れた。
ホールショットを取ったのは隼人兄。
二番手に落ちた俺はそれから二台のバイクのケツを追いかけるハメになる。
隼人兄とサイドバイサイドで走る兄貴の亡霊バイク。
何が言いたいんだよ、兄貴。
ふざけんなって、いい加減にしろよ。
退いてくれ、俺は隼人兄と決着をつけたいんだ、兄貴のためなんかじゃない。
俺のために!!
だから俺たちの戦いに水を差すな、頼むから真剣に勝負させてくれ、兄貴!!
そう願った瞬間、兄貴は俺の方を向いてVサインを掲げ先に行けと促してくれた。
遅えよ、後2周しかねえわ。
だけど兄の幻を振り切った俺のすぐ目の前に、追いかけていたあの背中があった。
大好きで憧れていたあの背中。
悪いけど今日は俺の背中を見てくれよ。
バックストレートからのフルブレーキでシケインに侵入。
インサイドにピタリと張り付く隼人兄のアウト側から、因縁の最終コーナーで一気に抜き去った。
風と一体になった気分ってのは、きっとこんなんだろう。
ラスト一周はただ目の前に誰もいないことが楽しかった。
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