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表彰台の下、他のカテゴリーの表彰式が全て終わるのを待つ。
横には隼人兄がじっと立っているだけ。
ッチ、おめでとうぐらい言えよな。
悔しくて思わず。
「手、抜いただろ、隼人兄!!」
俺から声をかけたことに驚いた隼人兄が顔をあげた。
「抜いてないって! 速かった、今日の秀二には勝てなかったよ。シリーズチャンピオンもおめでとう」
潔く俺の勝利を褒めたたえる隼人兄に、ずっと言えなかったことを言わなきゃいけない。
そのためにゼッケン18の幻は俺につき纏ってたんだろ?
「隼人兄、ごめん」
「え?」
呟いた俺に訝しげに首を傾げた隼人兄に、伝えたかったこと。
「本当はずっとわかってた。レースアクシデントだってことも。隼人兄だって完璧なライダーじゃないことも。でも俺はあんたに憧れてたから信じたくなかったんだよ、あの日、」
続きを遮るように隼人兄が首を横に振って話し始めた。
「あの日、楽しかったんだ、すごく……。子供のころから何度だって透也とは戦ってきたからさ、アイツがどのラインで攻めて来るのかもわかっていたし。透也のエンジン音が伝わってきて、一瞬並んだ時見えた気がした、何か今日めちゃくちゃ楽しいよなって透也の笑顔が」
懐かしそうに最終コーナーの方を眺めながら、隼人兄の目尻から零れ落ちてく涙。
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