FINAL LAP

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 ライディングスタイルが異なる二人。  感覚が優れた兄貴。  自分の感覚だけでギリギリを攻めていく、一見すると危ういスタイル。  風とバイクと兄貴は融合しているようで。  抜かれたライダーは風が過った錯覚に陥るらしい。  隼人兄はマシンにおいてもタイヤにおいてもマネジメントの天才。  タイヤのどの部分でコーナーを走れば一番効率がいいかよく知っていた。  最後まで大事に使うから、ずっとタイヤが。  真夏の鈴鹿を制したのは隼人兄。  タイヤの良い部分をラスト2周までに使い切ってしまった兄貴は、隼人兄に抜かれて相当悔しがっていた。 「秀二、見てろよ? 俺がチャンピオン取るから応援頼むな」 「ええ?! 俺どっちの応援したらいいの?」 「俺の弟なんだから俺に決まってんだろが!!」 「秀二、(うち)の子になれ! 俺が育てる! 透也はバカだからタイヤマネジメントを教えられない!」 「うるせえ、早く戻れ、バカって言ったオマエがバーカ!」  当時17歳だった二人が笑いながら交わした会話は多分それが最後だったんじゃないだろうか?  
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