49人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
13周の決勝レース、ポールポジションからのホールショットを兄貴は得意としている。
スタート直後の逆転を狙っていた3位スタートの隼人兄は2位ジャンプに留まった。
順調にそのままのポジションで飛ばしていた兄貴も、空の色が変わっていくのに気付いていたろうな。
7周目辺りで急激に暗くなり始めた。
母や父も灰色の雲を眺めて嫌な顔をしていた。
急に冷たい風が吹き、レース残り4周で降り出した雨は徐々にコースを黒く染めていく。
残り2周、先にメインストレートを通過したのは隼人兄。
そのすぐ後ろに兄貴の姿。
「え?! 何で?!」
声をあげた俺に父さんが苦笑して「またタイヤを使い切ったのか、雨で冷えたのか」
シリーズチャンピオンを取れなくても兄貴のスペイン行きは決まっている、無理はしなくてもいい。
隼人兄も再来年、兄貴の後を追うように海外GPを視野に入れていた。
兄貴は本当に負けず嫌いだった。
夏に隼人兄に、ここで負けたことをずっと悔しがっていた。
無理する人だったよな、兄貴は。
思い返せばそういう人だっていうのも本当は覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!