最終特殊清掃人

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 寂れたラブホテル。人気のないウィークリーマンション。廃墟となったクラブ。繁華街のはずれの特にうらぶれた地域に、その物件はあった。ホテル:アズール401号室。  記録に残る最初の事件は五年前。デリヘル嬢を喚んだ客と派遣した業者の、二人の男が死んだ。どちらもヤクザだった。単純なトラブルが暴力沙汰に発展したのか、組織どうしの争いが影響したのか、判然としない。以後401号室では自殺、他殺が繰り返され、わかっているだけでも五つの死体と十二人の怪我人・病人が生み出された。  建物周辺には瘴気のようなものが溢れ出していた。負の霊子場が、部屋の外どころか街区一帯に影響を及ぼしているのだ。  相変わらず私の死体でいっぱいの街路に、雀が落ちてきて痙攣し、息絶える。酒瓶が散乱する中に年老いた男がうずくまり、胸を抑え苦しげに呼吸する。十五歳以上には見えない少女が膝を抱えうつむいている。  少女?  近づく私の靴音に少女は顔をあげた。目が合った。  細い。病的に痩せている。手首を隠すように巻かれた包帯。何日も眠っていないのではと思わせる疲れた目が、じっと私を追っている。  どういう意味でも、関わるべきではなかった。私は清掃人であって児相の職員でも聖職者でもない。だが私は、気づかなかったふりをして通り過ぎることもできなかった。  私はかがんで、少女に向かって手を伸ばした。少女はその手を掴んだ。  指と指が触れた瞬間、少女がすでにこの世のものでないことがわかった。        
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