最終特殊清掃人

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 私はドアノブからゆっくりと手を離し、天井に向かって落下した。どういう落ち方をしようと、怪我をするような高度差ではなかった。ただ、心臓は爆発せんばかりの勢いで脈打っていたし、瞬間的に強烈な負荷がかかった肩から手首にかけての筋肉には、とうぶん消えそうにない痛みが燃えていた。  今、客観的に見て私がどういう状態なのかはわからない。幻覚の範疇ではあるのだろう。ただ、こうした無意識の反応は、装具や訓練によって制御しきれるものではない。死ぬほどびっくりする、というのは、文字通りの意味で起こりうることだ。  私はそのまま階段を四階へと向かった。非常階段の裏側を歩いたかたちだ。三半規管が違和感を訴えていたが、最初の驚きが失せてしまえば特に困難なわけではなかった。  付いてくるとも付いてくるべきとも思っていなかったが、少女は私のあとを追ってきた。重力など意に介さず、水に浮かぶように、空中を漂って。      
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