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心地よい温度1 冬の屋内
「おはよう、スバル。」
「お、おはよ。ルカ」
本棚の向こうから聞こえてくる会話に耳を澄ませる。
授業前に課題の小論文の本を探しに図書館へ寄ったら、いたのだ。私の憧れの人が。彫像のように整った美しい容貌にどうしても目が吸い寄せられてしまう。切れ長の目に、すっと通った高い鼻梁。無骨とは真逆で美しく、でも男性と分かる輪郭。この人が近くに来ると、無意識に目で追ってしまう。心にほわっと花が咲いたようになり、自分の中の何かが満たされる。その一方で、自分がとても動物的なメスって感じがして、少し嫌にもなる。
でも、いいの。美しいものを見ると人は癒されるのは、世界共通。あの人を心で愛でるのは悪い事じゃない、と自分を慰める。
ルカさんは同じ大学の違う学部の人。どの学部だか調べようとは思わない。ただ愛でるだけ。追いかけているわけではないから、偶然出会えた日は本当に嬉しい。寮が近くだから、調べなくとも結構な頻度で会えちゃうのだけれど。
今日はいい日になりそうだ。軽い足取りで教室へ向かう。
「響、おはよう。」
「おはよう、しずく。」
机にテキストとノートを出していると親友の雫が隣に座った。
ふんわりした雰囲気の雫。その見た目と違って、とても勉強家でやる時はやる人。でも必要だと思わないと何もしない。私は彼女のそこがとても好き。
「朝から機嫌良いいね、響」
雫は私を下から覗き込み、探るような眼をして言った。無駄に美人。気恥ずかしくなって、思わず目をそらしつつ答える。
「え?そうかな。」
「うん。笑顔が弾けてるよ。」
と雫が小さく笑う。
「あ。多分、ルカさん効果。さっき図書館で見かけたの。」
その時、教授が教室に入ってきた。私語に厳しい人なので、
「「後で」」
と小声で言ったのが同時で、二人で小さく笑った。
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