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寮の玄関を出たが、光汰の姿が見当たらない。辺りを見渡していると、パパンッと抑え気味の車のクラクション音が響いた。
すぐそばの路肩にハザードランプをつけて停車しているライトバンが目に入った。近寄っていくと運転席から光汰が降りてきて、助手席のドアを開けてくれた。
「ごめんな、響。」
寝起きの頭で整理できず、私が戸惑っていると、
「…ここ、あんまり停められないから、とりあえず乗って?」
光汰が急ぎつつも、少し申し訳なさそうに言った。
通りの向こうにトラックのライトが近づいてくるのが見えた。対向車線にも遠くから向かってくる車のライトが見える。ちょうどここですれ違うかもしれないタイミングだ。
私は慌てて車に乗った。光汰は
「閉めるよ?」
と私に声を掛けて助手席のドアを閉め、それから、運転席に乗り込むと、慣れた手つきでシートベルトを閉めエンジンをかけた。車は思っていたよりもスーッと滑らかに動き出した。
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