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光汰の話がちょうど終わる頃、お店のパーキングが見えてきた。
「走って逃げてごめんね。」
「いいよ。響は悪くないし。」
「バカって言ってごめんね。」
「いいよ。だって、大好きって意味だろ?」
光汰がふざけた調子で笑いながら言ったが、その声が少し甘さを含んでいた。
光汰は店のパーキングに入ると車を停め、エンジンを切るとシートベルトを外して、助手席の方に身を乗り出して来た。
「違った?」
顔を寄せて耳の近くで甘く低く声を響かせる。これは絶対ワザと、だ。光汰を見上げて睨むと、
「それ、誘ってんだよな?」
少し意地悪モードで光汰が近づいてくる…と思ったら、スタッフ出入り口のドアの開閉音がして慌てて離れた。同時に小走りの足音が聞こえる。
「店長だ…。」
とバックミラーを覗いた光汰が呟いて、車を降りた。私も慌ててシートベルトを外して、車から出た。
店長は、私が誤解してしまったことに責任を感じて待っていてくれたようで、私に詫びてくれた。
お詫びしなければならないのは、バイトスタッフの恋愛沙汰なんかに巻き込んでしまった私の方だ。私も店長に頭を下げた。
光汰は、店長に非はなく、自分が至らなかったせいで迷惑をかけたのだと詫びて、社用車を私用に貸し出してくれた店長に丁寧に御礼を伝え、車の鍵を返した。
「僕はできたスタッフに恵まれて幸せ者です。」
と店長は温かい笑顔で言った。
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