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光汰は、私を抱きしめていた腕をゆっくり解くと、私の両頬を両手で大事そうに包んで、目線を合わせて言った。
「響にとっても、俺が本当に特別で、この先も俺だけだって思えたら、この指輪を左手に移して欲しい。」
「え?」
次元の違う話になって驚く。
「あ、もちろん、その時にはもっといい指輪を買うけど!」
「えっと。ごめん…。ちょっと待って…。」
光汰が静かになって身動きを止めた。
だって、大学に入って、何でも言い合える雫や光汰みたいな大事な友達が出来て、複雑だけど特別な「カレシ」のルカさんができて、そして、光汰が本物の彼氏になってくれて…。
「幸せだなぁって、幸せ過ぎて怖いなぁって思ってたところで...。それ以上に舞い上がることなんてないと思ってた。」
「はぁぁぁ…、ごめんって言うから、早まったかって思ったじゃん。良かった。じゃ、取り合えずは嬉しいってことだよな?」
「うん。すっごい嬉しい。」
「じゃ、指輪、一つ左薬指に近づいた感じ?」
「なにそれ?一個ずつ動いてくの?じゃ、光汰がワルさしたら一個戻るとか。」
「...。」
「ワルさスルんだ?」
「しねぇよ。ただ、今までみたいにうっかり傷つけちゃったりするかもしんないだろ。」
「そしたら全力で逃げるから、全力で追いかけてきて?」
「…そしたら、またいっぱい泣かしちゃっていいの?」
「...。」
「エロいなー、響。そんな顔してやらしい事考えて。」
「なんのことかさっぱり分かりませんが?」
と私が言うと、光汰は私の頭を抱え込むように引き寄せて、
「じゃ、分からせてやるよ。」
と唇で私の耳に触れながら、甘くかすれるような声で囁いた。
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