心地よい温度1 冬の屋内

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「あ、ぽんた!」 「ぽんたって呼ぶな!」  光汰は雫の双子の弟。入学して間もない春、キャンパス内で斜め前を歩いていた女の子が「こうた!」 って呼んだのが「ぽんた!」って聞こえてしまい、 「え?ぽんた??」 と思わず口からこぼれてしまった。 「「いえ、光汰(こうた)です。」」  それが私達の出会い。双子で美男美女とか羨ましすぎる。性別が異なり二卵性だからか、小顔だという点以外はあまり似ていない。  雫は平均的な身長だけど、光汰は背が高い。雫は色素が薄い感じ。髪の毛も地毛でも明るい色で瞳も茶色いし、色白さん。光汰は健康的な肌色で、地毛は真っ黒らしい。髪の色は気分で変えるそうで、今は季節に合わせてキャラメルブラウンなんだそうな。  光汰は私の隣に椅子を寄せながら座った。 「なに?どっちか落ち込んでんの?」 「なんでそうなるのよ?」 と私が彼に向いて答える間に、光汰はサイドのフライドポテトをつまんだ。   「ちょっと~。なんで私のなの?しずくのをもらいなよ。しずく、小食なんだから。」 「いいじゃん。近くにあったんだもん。」 「あんたが近くに来たんでしょ?」 「コクり合ってるってことは、どっちかを励ましてんのかと思ったんだよ。」 ポテトの会話から、突然そっちに戻る? 「はい、あ~ん。」 と言われ思わず口を開けてしまう私。光汰はポテトを私の口に入れた。 「美味しいでしょ?フライドポテトは揚げたてが美味しいから、サイドだけどあったかいうちに食べた方がいいよ?」 そのポテトが長かったものだから、光汰の手からもぐもぐ食べ続ける。ホントだ。揚げたてのポテトはホクホクしていて、芋の旨味も感じられて塩が控えめでもおいしい。 「うん、おいしい。」 しずくがお腹を抱えて笑い出した。なんでそんなに笑うのかと雫を見ていると、 「響さぁ…文句言いながら食べ続けてるんだもん。…餌付けされたウサギみたいで。」 と言って、目に涙を浮かべて笑っている。 「…。」 「今ごろ、こいつは『あ、そっか』って思ったんだよ。」 そう言って、光汰は私の前に指を出した。 「はい。」 「なに??」 「指も舐めるかと思って。」 「舐めるわけないじゃんっ!」 光汰は雫と一緒になってケラケラ笑っている。 「コウ。」  斜め後ろから女性の声がした。光汰の彼女のミサキさんだ。平均より少し背が低くて、色白で目がぱっちりしていて一見可愛らしい人。悪い人ではないと思うのだけれど、なんとなく私とは違う種類の人な感じがして距離を置いてしまう。 「おぅ。じゃ、俺行くわ。」 と光汰は席を立った。 「じゃぁね~。」 と私達が軽く手をふると、振り返りもせず手をヒラヒラさせて彼女と並んでカフェから出ていった。
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