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心地よい温度2 バル
私も雫も親元を離れて生活しているので、少しでも生活費の足しにと空いた時間はバイトを入れている。幸運にも大好きなカップケーキ屋さんでバイトすることが出来た。店には併設のカフェもあり、結構忙しい。
今日は雫と飲みに出かけるので、早番にしてもらった。
「お先に失礼します。」
「今日は早上がりだったね。お疲れ様!また週末も宜しくね。」
「はい。いつもすみません!」
「全然!いっつも真面目に入ってくれて本当に助かってるから。ちゃんと学生生活も楽しんでね。今しかないからね。」
店長は見た目が若いけど、れっきとしたパパ。愛妻家な上に、子煩悩で有名。そして、スタッフへの気配りも出来る素敵な人だ。それもこのお店の雰囲気を良くし、更には評判を上げてるんだろうなぁと思う。
「お待たせ~。」
通用口そばで待っていた雫に声をかける。
「いいの、いいの。相変わらず店長さんかっこいいよね~。眼福、眼福。」
とお店の方向に向かって両手を合わせる雫。
「なにそれ~。しずくって中におやじが住んでる?」
と私が笑うと、
「響がソレ言う?あ、でも響のはちょっと違うなぁ。ん~…。光汰なら分かるかも。」
「またそれ?」
と私は笑った。
言葉に上手くできない感情とか感覚を、雫と光汰はとても共感できるらしい。光汰の方が言葉に表すのが上手いらしく、雫の感情を伝えると的確に表現してくれるのだそうだ。
幼い頃も、雫がお母さんに叱られていると、光汰が飛んできて全く言い訳ができない雫の代わりに一生懸命言いたいことや状況を説明してくれていたと、昔の話を聞かせてくれた。
「それで思い出した!光汰も来るって、今日。」
「金曜日の夜なのに?彼女、大丈夫なの?」
「今週末はミサキさん忙しいらしくてさ。暇なんだって。ごめんね~。」
「いいよ、全然。気を使う相手でもないもんね。」
ガシッ!
突然、頭に大きな手が乗っかってきて、
「ぐぇっ。」
思わず変な声が出る。
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