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「「「おつかれ~。」」」
バイト先から歩いて5、6分程のイタリアンバル風居酒屋に着くなり、料理を頼んで3人でグラスを合わせる。
ワイン樽風の丸テーブルに、頼んだ料理が並び始めた。アツアツのアヒージョを食べながらのビール。
「くーーーーっ。」
と勝手に声が出る。
「おやじかよ。」
「そうそう、さっきさ、その話になってさ。」
と雫が思い出して切り出した。
「響がね、私の中におやじがいるって。」
「しずくのは、ちっこい可愛いおやじかもな。裏が無い素直なところがあるからな。」
とローストビーフを口に運びながら光汰が答えた。
可愛いがられ慣れている雫は「可愛い」に無反応で話し続ける。
「でね、私思うんだ。響も中は違うよね?でもおやじっぽいけど、おやじじゃないんだよね…。」
光汰が来てすっかりお家モードの雫。髪の毛が食べ物にかかってしまいそうになっているのを、光汰が指ですくって耳にかけてやっている。
いいわぁ。この景色。見ているだけで癒される。双子と知らなければ、ただの美男美女。他人事のように眺めながら、ビールを飲む。
「あー。こいつは中におやじと見せかけた少女が住んでる感じだよな?案外純粋なところがあるもんな。」
「そうなのよ~。実は少女って感じだよね!」
「ってことは、オネエって感じか?」
わははは!と二人で爆笑している。
「私にはさっぱり分からない。さすが双子よね…。」
私がローストビーフを見つめているのに気づいた光汰は、ローストビーフの大皿から「いる?」の目線を送ってくる。私がうんうんと頷くと、私の小皿に数切れ乗せながら光汰は言った。
「お前はほんと、何かと俺らに『双子』を使うの好きだよな?」
「だってよく分かり合えててすごいなぁ、って思うんだもん。」
「そりゃ、一緒にいる時間長いから。きょうだいなんて、どこもそうだと思うよ。うちは学年も一緒だからさ。光汰、私もロースビーフちょうだい。」
雫が小皿を光汰に渡す。光汰は小食の雫に薄くて小さめのものを数切れ、選んで取ってあげている。
「ま、学年が一緒のきょうだいっていうのは、確かにあんまりいないよな。」
「双子くらいよね~。」
と私が言うと、光汰が言った。
「確かに。年子で同じ学年は珍しいよな。」
「年子で同じ学年になるの?」
「俺らじゃん。」「私たちじゃん。」
「え?」
「「え?」」
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