心地よい温度2 バル

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「「「え~~~~~~っ!?」」」 「お前、ずっと双子だと思ってたの?」 「だって、初めて会った時、どういう関係か聞いたら、雫が『弟みたいなもんだよ』って言ってさ。そしたら、あんた『俺が先に生まれただろ?』って言ってたじゃん。雫もさ『双子はお兄ちゃんやお姉ちゃんが先にどうぞ、って弟や妹に譲るから、先に生まれた方が弟なんだよ!』って言ってたよね?」 「「うん、言った。」」 「でしょ?」 「誰も俺らが双子とは言ってないよな?」 あれ?確かにそうかも。光汰が爆笑している。 雫も大笑いした後、 「ごめんね~。双子、双子って何度も言うなぁとは思ってたけど、『双子』みたいだっていう意味で使ってたのかと思ってたよ。確かに、私、よく言うね。双子は先に生まれた方が弟ってやつ。ほんとごめんね。」 と、長い間勝手に勘違いしていた私に謝った。 あんまり笑われてしょんぼりしていた私の頭をぽんぽんと撫でて、光汰が涙目になったまま私の目を覗き込んで言った。 「ごめん、ごめん。まさかそう思い込んでたなんて、気づかなかったよ。」 「もういいよ。私の勘違いだし。」 「いや、お前の立場だったら、そう思っちゃうよな。悪い、悪い。」 そして、光汰は奥にいた店員さんに向かって、 「すみません!モッツアレラフィンガー1皿、お願いします。」 と注文した。 「お詫びにごちそうするから。モッツアレラチーズのフライ。食べたことある?」 「ない!食べたい!」 「めっちゃ美味しいよ。響、絶対ハマる。」 と雫も言う。 「食べたい、食べたい!二人とも食べたことあるの?」 「うん。新メニューなので良かったらどうぞって、前回2人で来た時にお勧めしてもらったの。」 雫と光汰はこの近くのアパートに2人で住んでいる。偶然、私のバイト先が双子...いや、この兄妹の住む近所だった。 「で、なんで同じ学年なの?ぽんたは現役じゃないの?」 「いや、現役だよ。俺が4月2日生まれで、雫が3月30日生まれなんだよ。」 「そうなの。私が出産予定日より3週間以上早く生まれたんだって。」 「じゃ、学年は同じだけど、実際には歳は1歳違うんだ?」 「そうそう。だからね、いっつも光汰は可愛い私が心配だったんだよね~?」 「はいはい。ま、妹は可愛いからね。それに小さい頃は本当にみんなより小さくて幼くてさ。同じ学年に入れられて、同じように扱われるのがかわいそうな事も結構あったんだよ。早生まれの子はみんなそうなんだろうけど。それでも、実際に目の前で一つ下の妹が、俺と全く同じことをやれって言われてるのを見るのは納得できなかったよな。」 「そうそう。学年全体で体育の授業があった時、先生に『雫には難しすぎると思います!』って、手を挙げて大声で言ってたもんね。」 お兄ちゃんのように心配したり、世話をやいてるなぁと思っていたけれど、本当にお兄ちゃんと妹だった訳だ。 「実はさ、血も繋がってないんだよな、俺たち。」 「そうなの???」 「もう。いい加減にしなよ、光汰。響、絶対信じちゃうって。」 「嘘なの??」 「嘘じゃない。」 「ほんとなの⁉︎」 「冗談だよ。」 光汰は私の頭を犬にする様にヨシヨシと撫でた。双子じゃなかったという衝撃とほろ酔いで思考がふわふわしていた私は、大きな優しい手を感じながらこの人は妹と動物には優しいんだろうなぁとぼんやり思った。
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