イマージュ

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校舎にいるのが勿体無いくらい良く晴れた5月の終わり、私は窓際の席で考え事をしながら黙って座っている。 給食を食べ終わって、昼休みが終わった直後の授業はとてつもなく眠い。 科目が現代社会とくれば、退屈さも極まれりだ。 現社担当教師の二宮は、自分の授業のつまらなさを自覚しているのか、生徒が机に突っ伏して眠っていても一切気にしない。 テストも、宿題のプリントの中から同じ問題を出す。 だから、授業は聞いていなくてもさほど支障はないんだ。 普段成績優秀者の私も、この時間だけはボーっとしている。 起きてるんだから机に突っ伏して寝てる奴らよりも100倍マシ。 神妙な顔で座っているのは、授業とは全然関係ないことを熱心に考えてるから。 本当はこんな退屈な場所、来たくはない。でも、ここに来なければ親が心配するから、今のところ学校に通っている。 どの道、家にいたってやりたいことがあるわけじゃないしね。 それで最近、私は一つの楽しみを編み出した。 クラスの冴えないやつを空想の中でプロデュースしてイケメンやイケてる女の子に仕立て上げるんだ。 今夢中で空想しているのは、斜め前に座ってる春一のこと。 春一は、髪はいつも肩につきそうなほど長いし、眼鏡をかけている。背中もちょっと丸い。 もし彼の髪を切って眼鏡を外したら、多分イケメンなんじゃないかと思う。 何かの理由があって、わざとダサくしてるんじゃないか。なんて、漫画みたいなことを考えながら授業の時間を潰す。
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