要のための休日

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要のための休日

今日は休日だが6時半に目覚めた。やっぱり要の気持ちを聞いた俺は落ち着かないのだろう。昼ごろから来るようにと提案したが 要「落ち着かんので朝から行かせてくれー」 紫音「暇やからそっちでゴロゴロしとくわ」 2人には拒否られ、朝から来るようだ。おまけに鈴音からは 鈴音「明日すずの友達来るからくれぐれも恥ずかしいとこ見せんと兄らしく、しゃんとしとってなー」とか「うっといからすずたちに絡まんで部屋から出んといてー」 と昨夜言われていた。でもそんなの関係ない。鈴音に気を使うだけアホらしい。俺はそれどころではないから… 朝8時半 ピンポーン♪♪ 「朝からと言っても早すぎるだろ!普通10時くらいが相場だろ」  と、ブツブツ独り言を言いながら階段を降り玄関へ向かう。すると後方からドタバタと足音。鈴音だ。 鈴音「どいて!もぉ」  鈴音は俺を追い越して玄関のドアを少し開けた。 (鈴音の友達か?)  そう思ったが、すぐに鈴音の顔がよそ行きに変わったので違うと分かった。 鈴音「あ!いらっしゃいー」 (どこからその猫撫で声出してるんだ?) 鈴音「おにいちゃーん!要くん来たよー」 「うん。ありがと」 要「おはよう!康二」 (早えぇよ!) 鈴音「要くんゆっくりして行ってねー」 要「おうよ!すずちゃんいつも元気で可愛らしくて気が利く良い子やな!ありがと」 (お前は彼女の本性知らないんだ) 鈴音「うん、ありがとー」 (否定はしないんだな、こいつも…) 要は部屋に入るなり俺のベッドで横になった。 「お前早すぎるだろー」 要「いや、何か落ち着かなくて、寝られへんしーでで、暇やし、だからとりあえずここに来た。あれ?康二ママは?」 (自分勝手なやつだな) 「あー、何か友達と山登り行くって言ってたから今日はおれへん」 (関西弁使ってるなぁ俺) 「で、俺まだ寝ようと思ってたんやけど…?」 要「まぁそう言わずに…眠かったら俺の横で寝る?」 「要らん!」 (いちいち冗談に付き合う気にもならんわ)  ピンポーン!! またインターホンが鳴った。 要「紫音やな」 (紫音のやつも早いのか…)  俺より先に要が動き出した。要が階段を降りる後に続いた。要は小走りで玄関にたどり着くと勢いよくドアを開けた。 要「いらっしゃーい!」 (勝手にこいつは…)  要はそう言ったきり無言で止まっている。 「お前勝手に出……」  と言いながら要のところで立ち止まり外を見た俺も言葉途中でびっくりして何も言えなくなった。そこには紫音が立っていたのだが、横に並んでナナちゃんも立っていた。 菜菜香「お、おはようございます」 「え?あれ?」 要「お前ら…まさか…」  俺と要が焦っている様子を察知して紫音が話し出した。 紫音「あぁ、近くで会ったからー」 (意味わかんねー)  そこへ鈴音が慌てて玄関までやってきた。俺をキッと睨んでから外を見て 鈴音「おぉ、ナナいらっしゃーい」 と、よそ行きの声で菜菜香ちゃんを出迎える。 菜菜香「すずー、おはよー」 「ん?菜菜香ちゃんってすずの友達か?」 鈴音「そやで、前にも言ったやん」 (聞いたような聞いてないような…) 鈴音「あ、紫音くんおはよー」 紫音「おっす!」  そして紫音の後ろから声がする。 紗里「おっすー」 (げっ!なぜ紗里まで来てるんだ?) 要「何でお前が…」  要が言うのも最もである。 紗里「だってぇ…暇やもーん」 (だからと言ってここに来なくても…) 紫音「あぁ、すまん!昨夜暇やってライン来たので俺ら康二のとこに行くこと言ったら…着いてきた」 紗里「なーんか迷惑そうじゃなーい?」 (うん!迷惑) 要「お前帰れやー」 紗里「ハァ?無理無理!紗里はママのご飯楽しみに来たんやからー」 要「残念でーした!康二ママは今日おらへんし」 紗里「え?まじ?」 「うん、まじ」 紗里「じゃあ仕方ないから康二の部屋で遊ぶー」 と言って靴を脱いで上がった。そして 紗里「ほら、菜菜香ちゃんも上がって!」 (勝手に仕切っとるじゃん) 菜菜香「あ、すいません…おじゃましまーす」 (なんて礼儀のできた子だ!紗里とは違うなぁ) 要「ど、どうぞ!」 (お前の家かい!) 鈴音「入って入ってー!紗里さんおはよー」 紗里「すずちゃんおっす!今日はこいつらと遊びに来たから気にしないでね」 鈴音「はーい。了解です」  紫音も入ってきたところで俺の部屋と鈴音の部屋とに分かれて入った。紗里がとりあえず鈴音の部屋に入って行ったのを見て要が口を開く。 要「おい!紫音どういうことなんか説明しろよー。まさか付き合ってないやろな!」 (めっちゃ気になってたんやな) 紫音「アホか!ちゃうわ!だから紗里と一緒に近くまで来たらキョロキョロとして立ってたから、どうした?って声かけたらすずちゃんの家探してるって言うから一緒に連れてきただけや。俺もびっくりしたわ!」 (あーなるほどね) 要「ほんまやろなー?」 (疑い深いやつだな) 紫音「ほんまや、嘘言ってどうすんねん」 「紗里と一緒に来たし、疑うことないやろ?」 要「たしかにそうかも…で、紗里はこのこと知っとん?」 紫音「いや、何も言ってない…けど、あいつのことやからすぐバレると思うぞ」 要「そやでなー。俺がナナちゃんの事気になってるから今日は集合したって事、感じ取ってる可能性あるよなー」 紗里「ふぅん…そういう事かぁ」  急に紗里の声がしてドアを開け入ってきた。ドアを少し開けて話を聞いてたようだ。 要「お、お前…盗み聞きやんけ」 紗里「部屋入ろうとしたら紗里がどうたらこうたら言う声が聞こえてしばらく聞いといただけやんけ!何か文句あんのか?」 要「ございません…」  俺たち3人はどうも紗里には逆らえない関係にあるようだ。小学校の時はこの中でいちばんケンカが強かったのでその力関係が今でも続いている。見た目は可愛らしい顔してるのに中身は男子だから仕方ない。 紗里「要が恋したのかー」  っと要を見てニヤニヤしている。すかさず 紫音「茶化すな!これでも真面目に考えてるようやぞ」 (紫音ナイス!) 紗里「へぇ…要がねー。ま、紗里も一緒に考えたるわ」 「それにしても本人が隣の部屋に居るのに不思議やなぁ」 紫音「ほんまに…」 紗里「で!要はどうしたいの?」 (いきなりだけど、結局それが大事なところだ) 要「どうしたい?…って…言われても…」 (そりゃ急に振られてもそうなるわなぁ) 紗里「はっきりしろよー!面倒くさいから菜菜香ちゃん呼ぶ?」 (おいおい!) 要「あかんやろ…てか、やめて」 紗里「冗談やってーおもろいなー」 (そんな冗談やめとけよ) 紫音「お前、悪趣味やな。もっと真剣に考えたれよー」  紫音が言うと紗里ははいはいっと言わんばかりに首を縦に2回振った。そこで俺は 「昨日帰りに萌先輩に…」 と、俺は萌先輩に要のことを話した内容と、萌先輩がナナちゃんに好きな人いるのかどうかを聞くって言ってたことを説明した。 紗里「それいいやん!萌さんってめっちゃいい人やん」 (紗里!お前は知らないんだ。萌先輩はきっと楽しんでるだけだ) 要「萌先輩って優しいなぁ…頼りになるわ」 (こいつも単純やったな)  俺はふと紫音に目をやった。紫音と俺は目が合い苦笑いした。紫音もきっと俺と同じく萌先輩が楽しんでるってことは気付いてるようだ 紫音「じゃあ要の件は、萌先輩の報告待ちってことで今日の会議は終了やな」 「おぉーたしかに!」 要「お、おい…待て待てー!まだ1時間も経ってないやん…もっと、こう、ほら何かあるやろ?アドバイス的なやつ」 紗里「要ーがんばれー!」 「要がんばれー!」 紫音「要がんばれー」 要「お前ら…真剣になれよー」 紫音「真剣やで?真剣やからこそ萌先輩の報告聞かないと考えようがないやん?それとも…隣の部屋行って直接聞いてみる?」 紗里「あ!じゃあ紗里が聞いてこよか?」 要「ちょっと待てー!」 紗里「何で?ちゃっちゃっと聞いたら話早いやん?」 要「まだ、心の準備が今日はできてないねん」 紗里「何の準備やねん?アホか?」 紫音「な?萌先輩の報告待ちしてからの方がいいやろ?」 (さすが紫音、説得力あるな) 紗里「えー!せっかく聞いてきてあげようと思ったのに…」  紗里は残念そうな素振りをみせる。紗里も楽しんでるようだ。萌先輩といい女の子の方がすぐに行動に出るようだ。まあ2人とも楽しんでるようだが… 「では解散やなぁ」 要「は?解散?早くない?」 紗里「ほんまや!せっかく久々にみんな集まったんやから何かしようよー」 要「やでな!」 「えー!何するん?」 紫音「康二の家やから康二の素性捜査というのは?」 (急に何言ってんだ?こいつ…まさか) 要、紗里「イェーイ!賛成ー!」  要と紗里はノリノリである。きっとただ帰りたくないだけだと思うが気になるのは紫音が何か気付いてるのかということだ。 30分後… 要と紗里はゲームをしている。紫音はマンガを読んでいる。ただくつろいでいるだけである。 (なんじゃこりゃ?) 「お、おい…お前らただくつろいでるだけじゃん?」 紫音「いや、普段お前がどういうマンガを読んでるのか調査中だが?」 要「俺らも康二がいつもどういうゲームをしてるのか調査中!」 紗里「同じくー!」  適当なことを言っている。が、まぁこんなもんだろうと思ったのと同時に、俺の正体に関しての事ではなかったのでホッとし、それ以上は何も言わなかった。そして俺も静かにスマホを取りゲームを始めた。 数時間経ち正午になった… 紗里「お腹すいたー!」 俺は何か嫌な予感がした。
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