意外な特技

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意外な特技

紗里「お腹すいたー!」 「じゃあ家帰れよ」 紗里「えー!康二冷たくなーい?」 (たしかに冷たい言い方だったが…) 要「ほんまやー!もっとお客さんを大事にしろよー」 (ほら、出てきた) 「いやいや、ご飯無いし…」 紗里「え?そうなん?すずちゃんに聞いてくる」  と言い部屋から出て行き、数秒で戻ってきた。 紗里「康二ー、カレーあるって言ってたでー」 「え?そうなん?」 (そんなん聞いてないけどなぁ) 要「カレーいいやーん」 「ちょっと見てくる」  俺は一階に下りて炊飯器のフタを開けて見た。一升炊ぎの炊飯器の中に白米がぎっしりと出来上がっている。 (ご飯はじゅうぶんあるな!) 次にそれらしい鍋を探す。 (あれ?無い?) 色々探すが見当たらない。が、ふとテーブルの上に目をやるとレトルトのカレーが3つそれらしく置いてある。 (もしかしてこれのことか?)  俺はまた2階に上がり鈴音の部屋をノックした。 鈴音「ん?何?」 「カレー無いやん。レトルトが3箱あっただけやぞ」 鈴音「うそー!まじ?菜菜香に食べて行きって言ってるのに…どうしよー?」 「レトルトカレーの他には何か無いの?」 鈴音「カップ麺の焼きそばならあるってママ言ってた」 「何だそれ!何か出来るかもう一回見てくる」  そう言うと俺は再び一階のキッチンまで戻った。そして冷蔵庫を開け (卵が5個、中華スープの素、青ネギ、ワカメ、ベーコン、ニンジン、モヤシ、タマネギがあるな!調味料はっ…と…うん!ひと通り揃ってる。) また2階に上がり、鈴音と紗里たちに 「とりあえず、焼き飯とスープは出来る。足らなかったらレトルトカレーかカップ焼きそばを食べてくれ!」 っと伝えた。鈴音は 鈴音「おにぃ…出来んの?」 と心配そうに言っていたが 「家に誰もいない時は自分で勝手に作ってるから」 っと適当に言っておいた。  キッチンに立って自分自身で思い返す。よくよく考えたら一流シェフを目指していた。料理の工程が自然に頭に浮かぶ。気がつけばタマネギをみじん切りしていた。トントントンっとリズム良く切っていく。ベーコンもニンジンもネギも同じように切り… 数分後… ベーコンの焼き飯とワカメスープが出来上がった。味見をしたが申し分ない出来だ。 (久々に量のある料理を作ったが身体は覚えていたな) 洋風の創作料理が俺の得意なのだが、料理という観点からは中華料理もそれなりにこなせる。 「おーい!出来たぞー!」 俺は2階に上がるのが面倒なので一階から大声で叫んだ。すぐに全員が下りてきてリビングのテーブルを囲むように座る。大皿で2つドンっと焼き飯を出した。 紗里「えー!すごーい!」 要「まじか!上手いんやろな?」 菜菜香「すごい美味しそうです!」 紫音「ほぅ…」 鈴音「えー!こんなんしてもらった事なーい!」 (当然やろ!)  俺は小皿を数枚まとめて出し 「自分でとって食べて!あとワカメスープ注いでくるから待ってて」  と言いキッチンへと向かう。菜菜香が寄ってきて 菜菜香「何か手伝います!」  と言ってきたが 「あぁ、いいよ。座っててー」  っと静止する。スープを注いでいると 要「うそ!めっちゃ上手いやん」 紗里「美味しい!お店みたいやん」  などと嬉しい言葉を投げかけてきた。俺はお盆に注いだワカメスープを持っていきそれぞれの前に出していった。 要「お前、こんなん出来たっけ?」 「うん。ひとりの時こっそり作っていたから…」 紗里「あんたの意外な特技やなぁ」 (まぁ意外なのかもしれないな) 紫音「ふぅん…上手いな」 菜菜香「めちゃくちゃ美味しいです。こんな美味しいチャーハン初めて食べました」 (嬉しい事言ってくれる。ほんと良い子だなぁ) 鈴音「うわっスープもめっちゃ上手いわ。ここまで美味かったら逆にキモいな」 (意味がわからん!) 菜菜香「そんなん言ったらあかんって!素直に美味しいって言えば?」 鈴音「ほんま菜菜香は優しいなぁ。おにぃには気遣わんでもええでー」 菜菜菜「ほんまに美味しいもん!」 紗里「あんたこれからも作ってや」 「無理!」  こんな感じで全員で美味しく全て食べ尽くしてくれた。作った甲斐があったというものだ。最後に洗い物は菜菜香と鈴音が担当してくれた。  俺たちはまた部屋に戻り暇を持て余していた。 要「昼ご飯は美味しかったし、何より菜菜香ちゃんと食べたのがさらに美味しかったな」 (普通のやつはこういう時はのどを通らなくなるもんだが、こいつは特殊だな) 紗里「またその話?他の話題無いのー?」 要「な、なんてことを言う…」 紫音「たしかに…暇だな」 要「お前まで…」 紫音「まぁ、そんなことより暇やから康二のスパイクでも買いに行くか?」  そういえば陸上部に入った時に母からスパイク代として5万円貰っていた。紫音にもそのことを以前話していたのを思い出したようだ。俺は忘れかけてたのだが… 要「おー!いいねそれ」 「忘れてた!今日くらいしか買いに行けないよなぁ」 紫音「じゃあ行くか?」 紗里「うちも暇やから行くー!」 「邪魔しないようにするなら来てもいいよ」 紗里「は?せぇへんし…」 要「じゃあみんなで行こう!すずちゃんと菜菜香ちゃんも誘うか?」 紫音「お前、菜菜香ちゃん誘うか?の間違いやろ?」 要「うるさい!」  こうしてこの家にいる全員でスポーツ店へと向かった。菜菜香は自転車がないので鈴音と2人乗りをして自転車5台で店へと向かった。途中、要が鈴音が大変そうなので代わろうかとさりげなく言ったが鈴音に「大丈夫!」と言われ、あっけなく菜菜香との2人乗り作戦は失敗した。  自転車で30分ほど行くとスポーツ店へ着いた。そこである人と会うことになるとは誰も予想していなかった。
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