まさかの入部?

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まさかの入部?

ひと通りマネージャーとしての説明を終えたマネージャー新部員達と先輩マネージャーがこちらへ向かって歩いてくる。先輩2人と新入生3人だ。一年生の学年色が赤なのですぐに見分けはついた。 萌先輩「あー!来た来たぁ!」 大和先輩「ほぉーみんな可愛いねぇー」 萌先輩「でしょ」 キャプテン「こら、お前らしゃんとしろよ!」 萌、大和先輩「ほーい」 (この3人の関係性だんだん分かってきた気がする) キャプテン「マネージャー達、こっちにきて挨拶と自己紹介してくれるかー?」 マネージャー達「はい!」  みんな声を揃えて返事し小走りで駆け寄って来た。 そこで… 俺はビックリするような境遇に出くわした。 なんと…そこには…  ナナちゃんがいるではないか!ナナちゃんとは関西のマイナーな8人組のアイドルグループに属している うちのひとりだ。 (こんなところにいるはずはない。見間違いか?) そう思った。だが近づいてくるナナちゃんと思われる女の子の顔をよく見ると左にある涙ボクロと首のホクロの位置が本人と同じ位置にある。 (本人じゃん!) ほぼ確信に近づいた。そして自己紹介が始まった。最初に紹介されたのはナナちゃんぽい子だった。 ナナちゃん似「はじめて!これから皆さんのサポートをさせていただく神崎菜菜香(かんざきななか)です。よろしくお願いします」  俺は確信した。声がナナちゃんと同じなのだ。もう疑う余地はない。だが、周りの人たちは気づいていない様子だ。このナナちゃんの所属しているアイドルグループはよほどのオタクしか知らないだろうから当然かもしれない。そして他の2人のマネージャーの自己紹介も終わった。 キャプテン「マネージャーは陸上部員を練習を通して名前と種目を覚えていってくれ。」 (陸上部にナナちゃんが…) キャプテン「一年生は明日から練習の準備から合流するので分からないことがあれば先輩達から聞いて覚えていくように!」 一年生部員たち「はい!!」 キャプテン「では、今日は一年生は解散する。明日からに備えておいてくれ!」 一年生部員たち「はい!!」 キャプテン「では解散!」 (ナナちゃんが陸上部にいる) 一年生たちはその場でお互い話をしている。交流をはかるには当然かもしれないが…早く帰ればいいのにと思うのは俺だけだろう。でも俺はそれどころではなく (目の前にナナちゃんがいる!) 体が硬直して固まっていた。言葉も発せずあんなに帰るのを楽しみにしていた自分はどこへやらだ。そこへ要が話しかけてきた。 要「お疲れー」 「ああ」(ナナちゃんが陸上部に?) 3年生たちも寄ってきた。 キャプテン「お!姫野!明日はどうする?」 そこへ要が割って入ってきた。 要「いや、まだまだこいつは無理だと思います…」 松田先輩「あんないい走りしてんのにもったいないやーん。一緒にやろーよー」 要「そこは本人の意思が…」 美穂「姫野くん、やろーやろー」 吉川源太「どうせ、せんやろ?」 大和先輩「姫野!まぁ考えておいてくれ」 萌先輩「うーん、してほしいけど…こうちゃんの気持ちを考えてあげないとねー」 キャプテン「萌、お前たまに理にかなった事言うよなぁ」 萌先輩「たまにってなによー」 (ナナちゃんがいる!陸上部に) 要「まぁ姫野に関してはまたの機会に…」 紫音「…」 キャプテン「では、姫野、またな!」 (ナナちゃんがいる…)  ボーッとしていて返事をしない俺を見て要が俺の肩をポンポンと叩き、キャプテンの方へと視線をやり促す。俺はとっさにまわりの予想をくつがえす言葉を発した。 「…ります」 要「え?!」 要は真横にいたので俺の声が聞こえていたらしくビックリしている様子だ。その様子を見てまわりも動きが止まった。俺はもう一度声を大にして言った。 「入ります!陸上部に入部します!」 キャプテン「え!?」 大和先輩、松田先輩「えー!?」 要「えー!?」 源太「えー!」 くらら、美穂「おー!!」 萌先輩「やったぁー」 紫音「…」  まわりは少し沈黙してからざわついた。 (ナナちゃんと陸上部♪) 要「大丈夫なのかおまえ?」 「いやぁ、長い間心配かけたねー陸上最高!」 要「あ、いやぁ。嬉しいけど…おまえどうしたんや?」 「ん?別にぃ」 紫音「お前、マネージャー見てから変わったやろ?」 (さすがに紫音は鋭い) キャプテン「そっかそっか!お前のために俺はその決断は正解やと思うぞ」  キャプテンは相当嬉しいようだ。喜んでくれているが俺の視線はナナちゃんに釘付けだった。  こうして俺は1年間拒んでいた陸上部への入部を果たしたのであった。 紫音「…お前…」 「ん?」 紫音「いや、なんでもない」  紫音は無言で俺を見ていた。紫音のその視線を俺はどういう意味なのかこの時は分からなかった。     俺はこの日はこれで終わり着替えて校門から出た。明日から部活動が楽しみになっていた。部活動というよりナナちゃんと近くで居れるということが楽しみと言った方が正解なんだろうけど。  そんなこと考えながら駅へ向かおうとすると自転車の横に立っている萌先輩を発見した。そこへワンボックスカーが停車している。俺は素通りするわけにはいかないので 「さようならー」 とあいさつした。あいさつで俺に気づいた萌先輩は 萌先輩「あ!こうちゃん!おつかれー…今朝はありがとね。」 と相変わらず気さくに返してくれた。 「自転車積んで帰るんですかー?」 と尋ねると 萌先輩「うん、うちの家の運転手さんに迎えにきてもらってん。自転車いつ壊れるか不安だし、この足の状態じゃあ漕げないもん」 と怪我して包帯を巻いてる肘と膝を指さした。たしかに漕いで帰るのは大変そうだ。運転手さんが自転車をせっせと乗せているので邪魔になったらいけないので 「お疲れ様でしたー」 と、言い、萌先輩も 萌先輩「じゃねー」 と、手を振ったので俺はその場から離れた。 (家に運転手さんがいるって萌先輩ってお金持ちなんだろうか?) そう思いながら帰路へと向かった。  うちへ帰ると俺が陸上部へ入部することを鈴音と母はすでに知っていた。母はめちゃくちゃ喜んでくれて寿司を出前で取ってくれていた。 (なんと大げさな…) と、思ったがこれまでの康二に対して母もかなりの不安とストレスを持っていたことを想定するとありがたいとも思うのであった。  夕食を済ませ部屋に戻るとやっと落ち着いた気がした。そしてじっくり自分のことを考え整理してみたらある疑問が浮かび上がった。
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