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45歳の自分はどこに行った?
重大な疑問とは、前の自分である。今現在が入れ替わった高校生の康二だとしたら元の45歳の本体の自分はどうなったのだろう?
(やはり電車事故で亡くなった?)
そう思うとどうしても気になったので、昨日の電車死亡事故を関東に絞ってスマホで検索してみた。
【電車死亡事故件数、0件】
であった。念のため一昨日と今日も検索してみたがいずれも0件と表示された。思っていた結果と違いホッとしたが更に疑問が積もった気がする。
それともう一つの疑問も同時に浮かんだ。それは、この高校生の康二の元の康二君はどこへ行ったのだろう?俺がこの康二になったのだとしたら元々中に居てた本人の行方はどうなったのかということだ。もしかして誰かに変わって中身が存在してるのかもしれない。
俺は考えた。
(現実はどうなんだ?それとも今の状況が本当の自分で夢を見てたのか?もしかして前世の記憶?)
様々な憶測が浮かぶ。が、確かめる事は今のところ無くどうしようもない。
(とりあえず今を精一杯楽しむか…)
それしかできる事はないのでしばらくはそうする事に決めた。
次に頭に浮かんだのはマネージャーとして入部してきた神崎菜菜香の存在だ。俺が知ってるアイドルグループのメンバーの中のひとりナナちゃんで間違いない。
(高校へ入学するのは当然なんだろうけど、何故マネージャーしようと思ったんだろう?アイドル活動への差し支えはないのだろうか?)
そんな疑問も浮かんだ。そして俺は自然とスマホで検索していた。
「え!!マジか…!」
思わず口に出た。それほど衝撃的な記事が目に飛び込んできたからである。その記事はナナちゃんの所属する会社の神戸GAO企画のホームページにあった。記事には
【このたび経済不況などの影響から経営していくのが困難となり、やむを得なく事務所を閉鎖することとなりました。今まで応援していただいた皆様方には大変ご迷惑を……】
(倒産したんだ…)
そして記事の下にメンバーの情報があるのに気づいた。
【…カヲル、ナナ、チナの3人はこの業界から引退します。…ナナのコメント、今まで応援してくれたファンの皆様ありがとうございました。その暖かい応援のおかげで2年間楽しくアイドルやれたと思います。そして私をどんな時も陰で支えてくれたマネージャーに感謝です。もう皆様とは会えないけど今度は私も何かの支えになれる頼られる人間になっていこうと思います。皆様もこれからも元気で頑張ってくださいねー】
(引退するんだ…最後までいい子だなぁ)
そんな気持ちになりしんみりしてしまった。また、
(だからマネージャーになりたいと思ったんだ)
というマネージャー入部の謎も解けた。これからは菜菜香としての人間を応援したいとも思った。
そして女の子といえば、朝の突然の萌先輩との初対面は衝撃的だった事も思い出した。あのいい匂いと自由気ままな人なつっこい性格は気にならないはずはなく、これまでの経験した中では居なかった。今でも思い出したらドキドキする朝の距離感。ほんとに近い距離で話したなぁと思いまたドキドキする。変な存在感の先輩なのだ。
(運転手が家にいるって事は、きっといいとこのお嬢様なんだろうな)
など謎の先輩でもあった。
(それにしても走るってこんなに気持ちよかったっけ?身体が宙に浮いてまるで飛んでる感覚だったなぁ)
100メートル走のことを思い出しウキウキした感覚がよみがえる。この高校生康二は走るために生まれたんではないだろうかとさえ思うほど足はよく動くし身体も軽い。
(明日からの練習が待ち遠しいな)
と、これまでの自分に無かった感情も湧くのを感じる。
要も紫音もいるから心強いし、先輩たちも同級生も
全国大会での活躍を目標としているから活気もありやりがいがある。あとは吉川源太と山口魁斗が俺を敵視しているのでどうなることやら…
同級生のくららと美穂は…
など色々考えていると眠くなってきた。突然のことやら初めてのことやらで気が張っていて疲れたんだと思う。まぶたが重くなってきた。明日から頑張るんだしそろそろ寝ないと、と考えると同時に眠りに陥った。
(ここはどこ?)
(いい匂いがする)
テーブルを囲んで人が座っている。向かいに、要?その横に紗里?俺の横には萌先輩が…
どうやら4人で勉強しているようだ。
要「あぁ疲れたー!」
要が疲れた様子で横に寝転がろうとする。そしてごく自然に紗里のヒザの上に頭を置く。そう、世間で言うひざまくらの体勢だ。紗里は要の頭をなでている。
「えぇー!」
要「気持ちいいわぁ。」
と言いながら今度はうつ伏せになりヒザに顔をうずめる。
要「お前もしてもらえよ」
と言い、萌先輩の方へ視線をやる。
「い、いや、む、無理やろ」
焦った俺は変な言葉使いになっている。
萌先輩「こうちゃん恥ずかしいん?いいよ!おいでー」
萌先輩が手を広げて呼ぶ。
(いいのか?ほんとにいいのか?)
しばらく悩んだが横になって恐る恐る頭を萌先輩のヒザにゆっくりと預ける。
「すっごい気持ちいいです」
生の素足の感触が特に心地良かった。
萌「そやろー、もっと近寄っていいんやで」
(な、なんと!)
俺はドキドキしながら萌先輩の腰あたりに腕を回して甘えるようにくっついた。
萌「こうちゃんって照れ屋さんだね」
(え?あ!そうかもしれない)
否定したいところだったが、照れ屋なのは否定できない気がしたので何も返せなかった。萌先輩のヒザは柔らかくとってもいい匂いがして心が舞い上がってしまった。気がつけば要と紗里は消えていたが大して疑問を持たなかった。
萌先輩「こうちゃんって付き合ってる人はいてるの?いてたら萌とくっつけないねー」
「全くいません!」
萌先輩「そうなんや。良かった」
そう言ったかと思うと萌先輩の顔がもう目の前にいた。
萌先輩「キスする?」
ニヤッとしながら言ってくる萌先輩の言葉に俺はとてつもなく鼓動が激しくなった。
「俺、し、したいです!」
(もう思いっきりくっつきたい!)
萌先輩「いいよ」
(マジっすか!)
萌先輩の顔が更に近づいてくる。夢のようだ。
「ハァハァ」と息づかいもお互いに荒くなる。
その時、声が聞こえた。
(夢か?いやだ!これは現実だ。現実であってくれー)
声「早く起きろー」
(いやだ!夢だとするなら続きを見てやる!)
が、2度と夢の世界には戻れなかった。
声「アホ兄ぃ!さっさと起きろや!」
目を開けるとそこには鈴音が立っていた。
「あれ?あれ?いいところだったのに!」
俺が言うと
鈴音「アホか?まだ寝ぼけとん?」
相変わらずの口の悪さだ。
鈴音「どうせエロぃ夢でも見てたんやろ?」
(なぜわかった?)
俺がキョトンとしていると鈴音は一歩引いて俺の下半身にチラッと目をやり
鈴音「マジ?図星かい!うわっ気色わるー」
と言い放ち慌てて勢いよくドアを閉めて出て行った。
(ドアの閉め方本当に雑いなぁ)
呆れた俺は学校へ行く用意へと急いだ。が、夢のことが頭から離れないほど鮮明で刺激的だったことは言うまでもなかった。
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