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きっと屋根裏部屋でもあるのだろう、と思っていた。そこに何かお宝画角してあったりしないかなとか、こっそり神棚があったらホラーだな、とか。想定はその程度のものだったのだ。ゆえに。
「うっぎゃああああ!?お、おばけー!?」
飛び込んだ僕は、びっくりしてしまったのである。押入れの中には、小さなおじいさんのようなものがいて、飛び込んできた僕をじーっと睨んでいるのだから。
「こら!おばけとはなんだ、おばけとは!ワシはれっきとした神様であるぞ!」
「か、か、神様ぁ!?」
「そうとも!押し入れの神様とは、ワシのことであるぞ!正確には押入れじゃなくて屋根裏部屋にいるわけだが、なんかゴロがいいから押し入れの神様を名乗っておる!」
「い、いやどっちでもいいけど……」
猫である僕と同じくらいの背丈しかない、小さな小さなおじいさん。でもなんだか灰色のローブみたいなものを着ているし、むにょーんと曲がった木の枝のような茶色の杖も持っている。加えて、禿げ上がった頭に真っ白なヒゲをもっさりと生やしているときた。確かに神様っぽい外見ではあるのかもしれない。あるいは、昔ながらの“仙人”というやつが似ているのかもしれなかった。やっくんが見ていたアニメにこんなかんじの仙人がでてきた気がする。
「いやあ、久々の来客だ。というか、ワシは封印されてしまっていて全然押入れに出られなくなってしまっていてな。扉を開けてくれて感謝するぞ、猫よ!」
僕の言葉が理解できるらしいおじいさんは、妙にご機嫌である。押入れに出られなくなってたのに押入れの神様を名乗るのってどうなんだろう、と思ったがそれはそれ。封印されていたとか言っているけど、僕がちょっとつんつんしただけで扉は開いたんですが――と思って気がついた。
そういえば、さっきは大掃除で中身が外に出されていたから入れたけれど、いつもなら押し入れの上の段は上の方までみっちりものが詰め込まれているのである。あの扉がつっかかっていて開かなくなっていた、ということはあるのかもしれない。
裏を返せば。僕もさっさと帰らないと、また押入れが塞がれて戻れなくなる可能性があるというわけだが。
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