押入れにファンタジー

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 *** 「ただいま~!」  やっとクリスマスの繁忙期がひと区切りして、清々しい気持ちで家に帰って来た私。コールセンターで一番問い合わせが多いのが、クリスマスプレゼントを開けた二十五日の午前中までであると知っていりうからだ。クリスマスケーキも、二十五日にもなればかなり安売りされている。何故だか日本のクリスマスは二十四日が本番扱いされているからだ。  二十五日の今日が、我が家にとってはクリスマスの本番である。私がケーキを持って帰宅すると、“おかえりなさーい!”と息子と猫が出迎えてくれた。 「にゃあああ……!」 「お帰りやっくん。はいはい、リオもお帰り、ね」 「にゃん!」  手洗いうがいをしている間も、リオはそっと私の足にすりよってくる。最近は全然構ってあげられず、寂しい思いをさせていたことを知っていた。小学生で反抗期気味の息子より、リオの方がよほど寂しがり屋であることを知っている。最近は家にいても掃除をしているか、寝ているか、家事をしているかといった有様だった。正直、悪いことをしたな、とは思っていたのである。 ――そういえば。……やっくんにはクリスマスプレゼント用意してたけど、リオには何もないのよね。……何か、この子が喜ぶものはないかしら。  足下を見ると、可愛い茶トラの猫はじっとこちらをけなげに見つめている。そうだ、と私は思って、猫をそっと抱き上げた。 「いつもはダメって言ってるんだけど……」  じっとその丸い目を見つめて、微笑んでやる。 「今夜は、ママと一緒のお布団で寝ようか?リオ」  私がそう告げると。猫は嬉しそうに一声“にゃん!”と鳴いたのだった。
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