幼い頃

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これは…。 1人や2人のじゃない。 さっきまでキャーキャー煩かったのに今は静かだ。 そのせいで、よけい周りからの多数の視線を感じる。 そして、目の前からは射ぬくくらいのを。 「……な、なにかな?」 「何じゃないよ。いきなり夫婦漫才はじめないでよ」 「$%;&D¥&"jr/SKB%!!!」 「夫婦漫才かぁ~」 絵美、夫婦漫才って!? 鼻を押さえいる莉子は何言ってるか分からないし。秀人は漫才したいの!? 「しょっ、紹介して…」 鼻血を拭きながら必死の形相で莉子に箸を持つ手を捕まれた。 「うっ、うん」 手に血がついたよ。 ホラーみたいに指の後がしっかりと。 「こっちは小野田絵美ちゃん。こっちが田所莉子ちゃん。2人とも同じ日本画科1年で同じ年」 「で、この人は兵藤秀人」 私は秀人に向かって手で示した。 「兵藤秀人です。日本画の大学院修士1年です。宜しくね」 柑橘系の爽やかな匂いでもしそうな笑顔で秀人は微笑んだ。 絵美も笑顔で受け答えしている。 美男美女。絵になる。 尊い。 あ、莉子、自分の手をもじもじと擦り合わせている。秀人と握手をしたいけど、手が血濡れてるので出来ないんだ。 私を掴んだ時も少しは気にして欲しかったものだ。 優しい私はそっと今朝駅前で配られていたウェットティッシュの試供品を莉子に手渡した。 いそいそと手を拭いた莉子は無事に秀人と握手をしたのだが、喜びのあまり白目で倒れてしまった。 恐るべし兵藤秀人。
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