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「へっぷしっ!」
いかん。
日陰で描くには薄着だった。
あ~でも、今描いてしまいたいんだよね。
もう7割がた描けてるし。
根性いれて、気合いで頑張るぞ!
ブルブル
足を貧乏揺すりして体温アップ!
ガクガクガクガク
いかん。寒すぎて貧乏揺すりくらいではどうにもならない。
手までかじかんできた。
「あとちょっとなのに!へぶしっ!」
「そのようだね」
「ひえっ!?」
誰もいないはずの場所で声が。
お化けか!
背後を見る勇気がない。
「これ、どうぞ」
「え、あ?」
フワリと肩に温かみのあるものが掛けられた。
男性もののグレーのジャケットだ。
「もう出来そうだよね。僕ので良ければ絵が完成するまで使っていて良いよ。今日持ってきたばかりの新しいのだから」
とても背の高い男性が背後にたっていた。
その人は細い目を更に細くして、ニコニコと笑っていた。
「今野先生!」
「うん。後で返してくれたらいいから。頑張って」
そう言って、音もなげに去っていった。
今野貴史先生。
日本画の講師の先生だ。
通称「巨人兵」。とても背が高くスリム…その体型が某アニメの巨人兵に似ている事から影でそう呼ばれている。いや。中の良さそうな先生が直接そう呼んでいるのを聞いた事もある。確かまだ28歳と若いし、優しいから学生からも親しまれている。
確かにジャケットかしてくれるなんて優しいな。
でも、まだ殆んど喋った事ない先生からかりているのも気まずいな。
早い所描きあげてかえそう。
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