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もともと可愛らしい志麻さんの、涙目上目使いはかなり危険です。
僕のような人畜無害な骸骨が相手だから良いものの、他所で殿方を無自覚に見上げないように、なんと言い聞かせれば良いのやら。
「志麻さん、先程申し上げた通り僕は変装はできません」
「駄目かぁ。折角一緒に出掛けるのに、バラバラに歩くのって寂しいじゃない。昼間も会話できるように成ったんだし、一緒に歩きたいって思ったのよね」
「志麻さん、大事なことを忘れていますよ」
「大事なこと?何だろう?」
「その幼馴染のお姉さんにお会いするのは日中なんですよね?昼間は霊感がある方でもそんなに簡単には見えません。一部の霊感が強目の人にしか見えませんし、そういう方々は僕の霊力を見分けるので変装は無意味なんです」
「あ~」
志麻さんの首が左に傾き目が泳いでます。
しまった!と顔を赤く染める志麻さんを、この先どうやってお守りして行けば良いやら、悩みが尽きない今日この頃。
「まあ、そんなに離れないように今回は、浮遊霊のフリで憑いて行きますので、二人で歩くのはまた別の機会に作りましょう」
「うん。約束ね♪」
ご機嫌を治された志麻さんを湯冷めする前にベットに上げて、おやすみなさいの挨拶を交わします。
志麻さんの寝息を聞いていた時、不穏な空気を感じ窓の外へ出てみれば、僕の張った結界の外側をツルンと滑るように弾かれる質の悪い霊が1体、残念そうにこちらを見ています。
志麻さんや隣の住人達のことを考えると、そろそろ霊力の補充をしておきたかったので、日曜日のお出掛けはこっそり霊感のある人に感知されて、怖がって貰わないといけません。
質の悪い霊は何時だって自分よりも弱い者を狙っているから、志麻さんはまだしもお隣の、木本家の友人達が今まで無事だったことが不思議です。
ふと、ありもしない足元に目をやれば、隣の鯖虎猫の武蔵君が先程の霊の後ろ姿に毛を逆立てています。
なるほど、木本家は勇敢なナイトに守られているようです。
彼が居てくれるのならば、半日程度の外出で質の悪い霊が入り込むこともなさそうですね。
僕が離れれば離れるほど、距離に応じて結界は弱くなりますからね。当日は志麻さん以外の友人達のことは、武蔵君にお任せしましょう。
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