志麻さんと血みどろの骸骨3

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 日曜日、午前中に家事を終わらせた志麻さんは、お気に入りのワンピースとやらに軽めのコートを羽織り、なんだかウキウキしているご様子。 「志麻さん、ところで今日はどの辺りに出向くんでしょう」  出掛けしてきたものの、僕は目的地を知りません。  人気のない辺りで弾むように歩かれる志麻さんの横に並び、こそりと話し掛けました。 「うん、私が働くオフィス街の近くにある、呑み屋街に今日会うお姉さんの事務所があるの」  アパートから駅へ向かう途中、近道となる公園を通り抜けながら、志麻さんはこれから訪ねる方の話をしてくださいます。 「同い年の幼馴染が居てね、家が近いってこともあって同級生だったの。小学校から高校までずっと同じ学校だんだけど、向こうは男の子だったから仲良しって程ではなかったんだけど、お互い良く知ってるの。今日会うのは、その幼馴染の三つ年上のお姉さん」  公園の真ん中で立ち止まる志麻さん。  少し言い辛そうな顔をしながら話を続けます。 「お姉さんからね、霊感あるって聞いたときは私、信じなかったんだぁ。嘘だとは言わなかったけど、幽霊なんて居ないって思ってた。居たら怖いなって、そう思ってるだけで、本当は遊びみたいなもんだって思ってたの」 「会いに行くのが後ろめたいんですか?」 「うぅん、後ろめたくはない。あの頃の自分が申し訳なくて恥ずかしいだけ。今はお姉さんに霊感あって幽霊のことを話せる、そのことが本当に嬉しいの」  僕が周囲を伺いながら話して居るにも関わらず、志麻さんは普通の音量で会話をしてくるので、僕は冷や汗の代わりに血が滴り落ちて止まりません。(どなたかハンカチを貸して頂けませんか?イヤ、触れないの忘れてました)  このままですと志麻さんが、独り言を大声でする変な人に間違われてしまうので、やはり僕が注意して行動しなければならないようですね。  そしてなんだか一つ乗り越えようとしている、そんな力強い笑顔を前に向けて再び歩き出す志麻さんの少し後ろを、僕は憑いて行くんです。  駅前の商店街を通り過ぎ、駅のホームで十代の女性一人、電車を七駅目で降車し改札内で、自販機の補充をしている男性一人、オフィス街とは反対側にある呑み屋街の裏通りで、バーテンダーらしき男性一人。  一人一人は僕に寒気を感じた程度の霊感でも、今回の霊力補充としては中々の収穫でした。  僕の恐ろしい姿を見える人が居なかったこと、それが一番有り難いんです。  相変わらず小気味よく歩く志麻さんは、呑み屋の集まる小さなビルの地下1階、一番奥の扉の前で足を止めました。 「ねぇ幽霊、ここみたい、幼馴染のお姉さんの事務所」  地下とは云えど掃除と換気が行き届き、閉塞感のない清潔なフロア。くすんだ水色のペンキが塗られた金属製の扉には、銀色の板に黒文字で【仲介屋】と彫り込まれたプレートが掛けられています。
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