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なんとまあ、志麻さんと来たら、この手の人を僕に紹介するとは恐れ入りました。
ですが志麻さんらしいですし、僕のために今日という日を使ってくれているのだと、解っているから何の心配もしませんが。
僕の沈黙を不安と捉えたようで、南原さんは志麻さんのことを弁解し始めました。
「誤解しないでね。志麻ちゃんは別に骸骨君のことを、どうこうしようと思っている訳ではないの。除霊の相談とかではないのよ」
「ええ、勿論です。志麻さんはそんなことは考えません。それよりも南原さんこそ、僕を随分と自然に受け入れていらっしゃる。怨霊が側に居て、志麻さんに害を与えるとは思わないのですか?」
「思わないわねぇ」
即答ですか。
南原さんは志麻さんと同様に、警戒心の無い笑顔で僕に語ります。
「もし骸骨くんに悪意があれば、志麻ちゃんはとっくの昔に取殺されてるはずよ。怨霊が側に居て、身体にも心にも魂にも影響がないなんて、普通ではあり得ない。けど志麻ちゃんはとっても元気そうよね。だから心配する気にはなれない」
「影響って何のこと?どう云う意味?」
手にしていた湯呑をテーブルに戻し、いつもの問い詰め体制に入る志麻さん。
「志麻さん、僕が地縛霊から怨霊に成った話を以前しましたよね」
「うん。怨霊は恨み辛みで人に憑くけど、幽霊にはそれが無いって話をしたよね。怨霊に見られないように、お出掛けのときに浮遊霊のフリしたんでしょ」
霊感の弱い志麻さんはまだ怨霊についての知識が少ないので、ゆっくり説明してゆきましょう。
「志麻さん、怨霊は憑くものです。設定された条件に当て嵌まる個人、或いは不特定多数に憑きます。恨み辛みは憑くための条件で、憑くことで害をなし、害することで恨み辛みを晴らします。怨霊が憑くということ事態が害になります」
「そうなの?」
少し驚いた表情を見せる志麻さん。
それでも僕に対しての警戒心が皆無で、そんなところが心配なんですよね。
「でも幽霊は私に憑いてるけど、害なんて無いじゃない」
おやまぁ、害が無いとはっきり断言なさいますか?
南原さんが僕の説明を手伝うかどうしようかと迷う様子を見せるので、首を横に振って制止します。
「はい。僕はもともと肝試し用のインスタント地縛霊なので、恨み辛みという細かい設定がありません。恨みを晴らす必要がないので、人に害を与える必要もないんです。ですが志麻さんに怨霊と成り、志麻さんに憑いた以上は、悪意を持てば取殺すことも可能なんですよ」
ここまでお話しても志麻さんは怖がるでもなく、不思議そうにソファーの僕が座っているだろうと、予測した辺りを見つめています。
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