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【4】
南側のゲートが壊れていることにカイが気づいたのは、四月の終わりのことだった。カイと同室だった赤い髪が『施設』を去った日。
雨や地下水を飲み水に変える自動浄水施設が外にあり、ゲートはその施設に不具合が生じた時のためのかつての通用口だった。ドローン型の修理機器が主流の現在、ゲートは長いこと使われていなかった。
二日続いた雨が止むと、カイとゲルダは緑目を連れてゲートを抜けた。
「三年ぶりに髪を切ったから、首の後ろがすうすうする」
キョロキョロと森を見回しながら緑目が言い、少年のように短くなったゲルダと緑目の髪を、カイは「よく似合ってるよ」と褒めた。
カイの髪も短くなっていた。
絵本の中の王子様のような長い髪はもうそこになく、ゲルダは少し寂しくなった。
三年に一度、ゲルダたちは髪を切る。その髪は、『神様のギフト』として病気の治療で髪を失った人たちの医療用ウィッグになった。それが『施設』の決まり。髪を提供するのは『施設』の子どもたちの役目の一つだ。
ヒトを育てるのにはお金がかかるし、困っている人の役に立つことはとても大切で尊いことだから。ゲルダたちは疑問を持つこともなく、自分の体の一部である髪を差し出した。
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