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2020年暮れ、クローゼットと百貨店を行き来する。
クリスマス前に、サンタクロースの袋のようにいっぱいの袋をいっぱいにする。サンタクロースの袋には夢や喜びが。わたしがいっぱいにした袋には、疲労や労りが。ありがとう。ふたつの袋への共通語。中身の行き先は違うけれど、同じ言葉を口にする。
「何やってるの!」
たくさんの紙に囲まれた部屋で、すっかり固まってしまった君に声をかける。
たくさんの資料を有する君は、いつも紙に囲まれている。コピー用紙に新聞に雑誌に本に、すっかりペーパーレスが進んでいるこの時代に、君はいつも紙に囲まれている。
電子機器にも入っているのに、君は紙を大切にする。そこに走り書きでメモをし、丁寧に文章を練り上げたり、想像図を書き込んでいる。
「その方が、頭がスッキリしていくんだ」
わたしも電子機器に手書きペンで書き込みが出来るようになるまでは、紙を多用していた。重宝していた。けれど今、指ではなく、専用の電子ペンを使えば書き込める機器も出て来て、場面場面で使い分けている。ただ難点として、ペンの充電がなくなると、強制的に休憩タイムに入らねばならないところだ。ノリノリになっているときには出鼻を挫かれたみたいに、波が引いていく。紙にボールペンやシャーペンならそんなことにはならないのに。とブツブツ言っていたら、ならもう一本買えば?と言われたりもする。
でも。だ。
でも、いつの間にか充電がなくなっているのだ。使う時に2本同時に充電するハメになるのは、準備不足と言われてしまえばそれまでだが、充電のことを考えると、紙とペンが欲しくなるのだ。だから、結局両方使っていて、挙句、整理整頓が苦手な性質大爆発になる。だからよくメモした場所を探し回るハメになる。我ながら情けないと思うが、それはきっと君も同じで、今きっと君は途方に暮れているはずだ。判断がつかないのだ。捨てるもの。残すもの。判断するために目を通しながら読み耽ってしまうのだ。
自分の心が感じるトキメキで判断する選択方法が流行った時期もあったが、そうなると、全てにトキメキを感じてしまうわたしはどうしたらいいのだろう。
部屋の真ん中で読み耽る君の姿にトキメキながら、この人を永遠にここに閉じ込めておきたい。そう思い、掃除のことなんて忘れて、君を見つめ続ける。
君は気づかない。
君は相変わらず、紙に書かれている文字の羅列に没頭しているから。
と思っていたのに、そのままの姿勢で君が口を開いた。
「クローゼットは整理できたの?」
捨てる前に買い込んできた洋服たちの姿を見た君は、すでにクローゼットから溢れ出している洋服たちを指差し、「どうにかしてくれ」と言う。
「どんな服が似合うかな」
どうせ新しく買うなら、少し今までと違うものを。
そう思うのに、結局似たようなものばかり買っては、クローゼットが満杯になる。
せめて色味を変えて。と思うと、今度は似たような色が並びだす。
「早く終わらせてよ。そっちに早く行きたい」
お互いそう言いながら、終わらない掃除が必要な空間に永遠に、このままではいることになりそうだ。
終わらないものを無理矢理終わらせてしまうか、掃除を放棄してただただあなたを見つめているか。
君は変わらず紙の選別に没頭し、わたしは君を見つめながら、服選びに頭を悩ませクローゼットを満杯にする。
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