第2話 〜過去に追いすがる者達〜

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.  何かないかと考えたところ、ある事を思い出して、わたしの声のトーンが上がった。 「ねぇ芙美子ちゃん、下のお店で一緒にアイス食べない?」 「アイス?」 「うん、みんなはまだ来ないみたいだし、わたしおばあちゃんから多目にお小遣いもらったからさ、好きなの奢ってあげるよ」 「え、でも……悪いよ」 「いいの、いいの! 友達になった記念にアイスで乾杯しようよ。それともアイス嫌い?」 「……大好き」  その言葉を聞き終えるや否や、わたしは芙美子ちゃんと腕を組む形で椅子から立ち上がらせる。  申し訳なさそうにしていた芙美子ちゃんも、廊下に連れ出されるうちに自然と顔が綻んでいた。 「わたしはバリバリくんのソーダ味が好き! 芙美子ちゃんは?」 「わたしは断然……ビッグコーンのパイン味っ!」 「えー、ビッグコーンにパイン味なんてあったっけ?」 「あるよー、最近新発売されたんだよー!」 「そうなんだぁ、みんなが来ないうちに早く行こう!」  芙美子ちゃんの温もりと仄かなシャンプーの香りにひたりながら、二人で腕を組み、キャッキャと向かう階段。  再び出来た新しい友達に、わたしはすっかり舞い上がっていた。  小窓が陽だまりをつくる踊り場へ、階段を数歩下りた時だった。  ふと、体に触れていた芙美子ちゃんの感触が突然なくなり、わたしは足を止めた。 「あれ、芙美…………え?」  振り向いた先には、三階の廊下の窓が夏空を映しており、年季の入った天井には非常灯がポツリと見えた。  だけど、ただ、それだけだった。  肝心の芙美子ちゃんの姿が、どこにもなかった。  何か忘れ物でもして、教室へ戻ったんだろうか──そう思って急いで三階の廊下を覗いてみたけど、やっぱり彼女の姿は見えない。 「ふ……芙美子ちゃん?」  混乱する頭で必死に状況を整理しようとするけど、知識や経験をひっくり返したって結論にたどりつけない。  間違いなく、彼女はわたしと腕を組んでここまで来たんだ。芙美子ちゃんの柔らかい感触の余韻が、まだわたしの体に残っているんだ。  それなのに、これじゃあまるで──  ──芙美子ちゃんが──  ──消えた?──   .
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