第2話 〜過去に追いすがる者達〜

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.  廃校に残り続ける教室と廊下は、今日も何となくセピア色で、わたしは停止した思考のまま、どれほどか立ち尽くしていた。  あれほど外を賑やかしていた蝉の声も、今は全く聞こえない中、まほら屋のレジのおばさんの言葉が、今更のように蘇っていく。 ──もしかしてあなたには、あの子達が見えているの?──  背中に走った悪寒と同時に、わたしの肩に突然誰かの手が置かれた。声にならない悲鳴を発し、振り返った先には、青と白のストライプ柄のネクタイがあった。 「やあ、西條、今日も来てくれたんだね」 「高原……先生……?」 「ははは、そんなに驚くことないだろ。 さあ、もうみんな教室で待ってるぞ」 「みんな?」  反射的に廊下から覗いた『3-A』の教室内には、信じられない光景が広がっていた。ついさっきまでとは打って変わって、たくさんの生徒達の影が見えていたんだ。  わたしと芙美子ちゃんが教室を飛び出してから、わずか数分の間にみんなが揃った?  いや、それはおかしい。この建物はあくまでも校舎の“一部分”を利用したものであって、突き当りの『3-A』から先はすっかりなくなっており、つまり昇降するための階段はひとつしかない。  みんながあの教室に向かう途中、必ずわたしとすれ違ってなくちゃおかしいんだ。  それなのに……どうやって……? 「いっ……いやあっ!」 「お、おい、西條!?」  高原先生の手を振り払い、わたしは転がり落ちるように階段を駆け下りていた。  おかしい!絶対に何かがおかしい!  あのおばさんなら……あのおばさんなら、何かを知っているに違いない!  まほら屋に飛び込むなり、いきなりレジのおばさんと目があった。  泣きつくようなわたしの表情を見るなり、おばさんは他の従業員らしき女性にレジを頼むと、無言でわたしの手を引く。  連れて来られたのは店の奥にある控え室らしき部屋で、パイプ椅子に座らされたわたしの前に、冷たい麦茶がそっと置かれていた。  オーバーヒートした回路に冷却剤でも流し込むように、一気にグラスをあおるわたしを、対面に座ったおばさんがじっと見つめていた。 .
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