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「じゃあ俺、帰るから。」  目当ての席にいた先輩が、リュックを持って歩き出すとグループのひとりから声が掛かる。 「こうや!ノート忘れてんぞ。」 「え?たぶん俺のじゃないと思うけど。」  受け取って中を確認しようとしているのを見て、慌てて声を掛けた。 「すみません。私のです。」  知らない男性に声をかけるなんて、普段ならとてもムリだけど、さすがに中を見られる方が恥ずかしいから、頑張った。  こうやさん?は、そこで初めて私に気付いたようでノートと私を見比べている。 「あ、君の?どうぞ。」  渡してくれる時、ほんのわずかだけどニコッとしてくれて私の心は、とくんと鳴った。
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