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8
今日も手荷物を抱え階段を駆ける。そうして扉を開けた先、珍しく月はいなかった。ひとまず待機も兼ねて掃除を始める。
だが、終始彼は姿を見せず、作業は終了してしまった。一人での清掃は想像以上に大変だった。
用事か体調不良か、何にせよ今日はもう来ないだろうな――考えつつも去るのは惜しく、イヤホンを耳に無意味に時間を引き伸ばす。
ニュースを聞いていると、衝撃的な報道が飛び込んできた。掃除屋が逮捕されたらしい。しかも、後悔はないと言わんばかりに、全ての事件に対し口を割ったそうだ。
と言っても、逮捕そのものに対して驚愕はない。驚いたのは、含まれる内容の一部にだった。
そこには、月の両親の名が含まれていた。しかも"罪のない老夫婦を殺害した奴等だから"と動機を語ったという。
もしかすると、月は既に真実を知り、登校しなかったのかもしれない。きっと酷く困惑し、落胆しているだろう。こんな時こそ何か励ましを――。
最善の行動を探したが、何一つ見つからなかった。
そのまま時は流れ、結局月は一週間ほど現れなかった。その間に、学校中で飛び交う話が酷く不快だった。
秋川月は悪人の子どもだった、と。
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