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 月がいるのは、決まって放課後掃除の時だけだった。だが、必ず毎日清掃されており、訪れているのだとは分かった。  あの日から苛めはピッタリとやみ、私は夢に見た平穏な日々を過ごしている。そこには月と会う時間も含まれていて、私はその一時をとても気に入ってしまった。  月について時々悪い噂を聞いたりするが、彼のことだ。きっと誤解だろう。 「それ。いつも何聞いてるの?」  月が先にいる時は、決まってイヤホンを耳に掃除をしていた。音楽ジャンルの違いを、想像しながら答えを待つ。  だが、彼の口からは意外な答えが返ってきた。 「ニュース。青って掃除屋知ってる?」 「殺人事件の?」  ニュースで掃除屋と言えば、今や知らない方が珍しい。世間を騒がせている殺人鬼の愛称で、裁かれていない悪人を殺し続けている人物のことだ。悪人排除、という意味合いで掃除屋と呼ばれている。 「うん。青はどっち派?」  これは掃除屋の話題において外せない問いで、テレビやネットでもよく議論された。悪人を裁くための殺人について、賛成か反対を問っているのだ。  既に意見は固まっており、答えに迷うことはなかった。 「どっちとは言えないかな。時には悪も必要だと思うけど、殺人はちょっと考えちゃうから。月くんは?」 「俺は賛成派。殺しだって場合によっては許されると思う」  だが、意見の食い違いを知り、小さな気まずさを覚える。それ以上話題が膨らむこともなく、自然と話題は変化したが。
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