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「うん、古谷さんがなんて言ってたと思う?」街灯に照らされた真由の顔が僕の顔をのぞき込んでくる。僕の額の汗と脇汗が尋常じゃないくらい流れている。額を手で腕で拭ながら言った。
「いやぁ、全く想像できないなぁ」ある程度想像できる。でも言えない。最悪の場合を想定しないと。
「古谷さんね、涼に、彼女がいるって、言ってた」確かに僕はそう言った。その後に続く言葉は何だろう?真由はわざと区切って区切って話している。
「そ、それで?」
「古谷さんね、涼の事が気に入ってるみたい」じぃーっと顔を見る。めっちゃ顔が近い。チュッと軽くキスをした。
「もう、ごまかさないで」真由の顔からはパンを焼いたような香りがほのかにした。真由は顔をはなす。
「ごまかしてないよ、顔が近すぎるもん。それで、なあに?」
「古谷さんがね、わたしのアイドルだったのにって、彼女に取られたって、笑ってた」真由は笑っていない。
「なんだそりゃ?古谷さんはおばさんだからね。若い子を見るとそんな風に思うんだ」笑いながら僕は言った。ひとまずは安心か?
「取られたって言ってた、取られたって」真由の目が細くなっていく。そこか。そんなところに引っかかっているのか。
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