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Prologue
時計の針ほど信用できないものはない。
彼女が死んでから時間は止まったままなのに、もう何度夏を迎えただろうか。ステップセコンドの刻む音に耐えきれず時計は全てスイープセコンドに変えたのに、頭の中で秒針が鳴り止まない。
まるで感情を持たないこの心臓を切り刻むように、正確に規則的に無機質に残酷に。
あの連中に地獄の苦しみを与えるまで永遠に鳴り続けるだろう。
全てを終わらせる、凪いだ海に揺られる船に乗り込む。
たった一歩。
そう、たった一歩地上を離れればもう誰も引き返せない。
これは復讐であり餞。全てを奪ったあいつらへ、持てる限り全ての憎悪を込めた報復の船出。
永劫終わらない拷問の様な耳鳴りも、きっと止まる、この島で。
煉獄の崖の際に聳える岩を落とせば、きっと終わる、この夏に。
地獄の様な日々を鑢にして触れるもの全てを切り刻むように研ぎ澄ました。
必ず殺す。
全員殺す。
誰もこの鉤爪から逃れることは出来ない。
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