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「こレはジークフリートデスね。ドイツの品種デス」  ジョンソン・テイラーがいつの間にか寧衣良の隣に立ち、薔薇の香りを嗅いでいた。  薔薇の生垣は背の高いジョンソンよりも高く聳えていて、ジョンソンは長い坂道で疲れたのか膝をさすっている。 「ジョンソンさん、薔薇詳しいんですか?すごい!」  寧衣良は振り返りながらも、一歩距離を取る。 「ジョンと呼んで下サーイ。Mumが花好きデした。デモ、ネイラの方がキレイだヨ」    珍しく苦笑いを浮かべた寧衣良は何とか話題を逸らそうと必死で頭を働かせている。  普段強がってはいても所詮は女子高生。  年上の男、ましてや外国人から受ける強いアプローチには免疫がないらしい。 「…オーセンキュー!この色、あのマニキュアとそっくり!ね、江流久さん!」  寧衣良は隣の江流久に話題を振り救いを求める。 「……あぁ、何だっけ?あー…アインシュタイン…?」 「ヴァルトシュタイン・レイチェル・モーダン!ジョンも知ってる?」 「Oh、もちろん知ってますよ。……あのBootleg Pianist ネ」  ジョンソンの表情が打って変わって先程までの微笑みが消える。   「え?それってどう言う……」 「ほら寧衣良ちゃんたち早くー!もう館に着くよー!」  嵯峨野の声が庭園の出口の方で響く。  その声に導かれるようにして、3人は高くそびえ立つまるで城壁のような薔薇の壁の間を急いで走った。
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