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「とわ子!!
馬鹿なことを
言うんじゃない!!
それで幸せになれると
思ってるのか!!
とわ子が幸せになれる
ようにしっかりした家の
男と娶せてやるから、」
「家がしっかりしてても
その男自身がしっかりしてるか
なんて分からないじゃない!」
「お前は『嫁ぐ』
ということを分かって
いない!!!
嫁ぐというのは
旦那に嫁ぐ以前に、
『家』に嫁ぐのだ!」
はいぃ????
なんなの、そんなこと
聞いたら、ますます
縁談なんて嫌よ!!!!
私は立ち上がって
フンッ!!と鼻を
鳴らした。
「とにかく!!!!
私は縁談なんて
絶対に受けません!!!
ぜっっったいに!!!!
失礼します!!」
************
「結局旦那様は
自転車のことを何も
言われませんでした。
もう、ばあやは
どうしたらお嬢様が
ばあやの注意を
聞いてくれるのか
分かりません。」
夜。
私の部屋で、私の髪を
梳きながらばあやが
ぼやいた。
あら、そうね、
いつのまにか自転車の
ことが忘れ去られていたわ。
「自転車は今度から
無理しないって約束
するわよ。
それにしても父上!!
酷いと思わない!?
あの言い方だと家が
一番大事なのであって、
当人同士の気持ちなんて
二の次三の次!」
私が憤慨すると、
ばあやは困った様に
笑うだけ。
私は髪を梳いて
もらってから、
ベッドに潜り込んだ。
「私は縁談で結婚なんて
絶対にしないわよ。」
「いいえ、お嬢様。」
私の顎下まで
掛け布団をかけつつ、
静かに笑うばあや。
「お嬢様は、必ず
縁談で結婚なさいます。
今、いくら抗っても
それが運命です。
もうそのように
決まっているのです。
最後は、
そうなるのです。」
ばあやの言葉が、
嫌にズンとのしかかって。
私はばあやから
視線を反らした。
「もういいわ、寝る。
おやすみなさい。」
「はいお嬢様、
おやすみなさいませ。」
ぱたん、とばあやが
私の部屋を出ていって、
私は寝返りを打った。
浴衣が、少しだけ
着崩れる。
いやだわ、ばあやったら
あんなこと言って。
・・・ねぇ、でも、
もし結婚するなら。
私は、誰がいいかしら。
ぱっと思い浮かんだのは、
雪彦さん。
自然に、本当に自然に、
雪彦さんの顔が
思い浮かんだ。
・・・・違うわ。
これはきっと、
いつも慣れ親しんでて、
仲がいいからよ。
でも、私はきっと。
雪彦さんが、
他の女の人と結婚したら、
きっと、
きっと、ちょっと嫌だわ。
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