大正乙女ロード

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――――――――― ――――――――――――― 「ねぇ、とわ子、 あなたもう聞いた?」 あくる日。 私がお裁縫の宿題を 出しに行こうとしていると、 友だちが声をかけてきた。 「あら、何かしら。」 「お隣の組の町田さん、 縁談で公爵家に嫁がれる そうなんだけど、 どうも好きあってる お人がいたみたいで、 その人とかけおち騒ぎを おこされたそうよ。」 「まあ。」 かけおちって。 ずいぶん思い切った ことをなさるのね! 自分の親も 縁談相手の公爵家も カンカンでしょうに。 「町田さん大丈夫なの?」 私が尋ねると、 友だちが首を横に 振った。 「大丈夫なわけ ないでしょう。 今、町田さんは家から 出られないそうよ。 相手の公爵家も それはもうすごい 怒り様で、 破談になりかけてる らしいわ。 こうなると町田さん、 もう嫁ぎ先がないわねぇ。」 こんなにも世間様に 知られてしまっては、 町田さんをお嫁に 欲しいという家は ないでしょう。 好きあってた人というのは どんな方なのかしら。 「それ、かけおち相手は どんな方なの?」 「それがすごいのよ、 役者の卵ですって。 顔は良かったみたいよ。 でもねぇ、 役者風情じゃ、 家が釣り合わないから 結婚は無理よねぇ。」 友だちはなんだか イキイキと話してて、 いつの時代だって、 女性はこの手の話が 好きなのよ。 私はふむ、と頭をかいた。 すると。 「とわ子だって、 他人事ではないんじゃ なくて??」 はい??? 友だちの言葉に、 私はびっくり。 他人事ではないって 私がいつかけおちなんて するって言ったかしら。 「私はかけおち なんてしないわよ。」 「でもとわ子、 いつも言ってるじゃない。 私は縁談じゃなくて 好きな人と結婚する!! って。 縁談話が来たら、 とわ子も何か事件を 起こすかもだわ??」 「私はかけおちなんて しませんっ。 そんなことする前に、 ちゃんと親を説き伏せて みせるわ。」 とは言うものの、 昨日と父上との会話を 思い出すに、 説き伏せるのはなかなか 骨が折れそうだけれど。
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