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この時代、
縁談が決まった女生徒は
卒業を待たずに、さっさと
学校を中退して結婚して
いくのが普通。
町田さん、このままだと
縁談じゃなくて、
この“不良行為”で
中退しなきゃいけなく
なりそうね・・・。
恋焦がれた人と
添い遂げたくても、
家がそれを許して
くれなくて、
唯一、一緒に
なれる方法といえば
かけおち。
でも、先に待つのは
きっと苦難ばかり。
・・・・ああ、
唯一ではないわね、
もう1つあったわ。
もう1つの手は、
相手の方と一緒に
心中(自殺)すること。
死んだら、
それまでなのに。
どうして、
自分と将来を分かち合う
相手を他人に決められないと
いけないのかしら。
私は、納得できない。
だから、私は、
私の好きな人と
結婚するの。
***********
「とわ子!」
「とわ子さん。」
帰り道。
私がトコトコ
歩いていると、
兄上と雪彦さんに
出くわした。
「とわ子、今日は
自転車じゃないんだな。」
「・・・ええ、
まあ。」
だって今朝、ばあやが
うるうるした目で私を
ずっと見てきたんだもの。
「兄上と雪彦さんは
お勉強は終わりですか?」
私が訊ねると、
兄上が「まぁな。」と
返事してきた。
「今日はこのあと、
先日新しく出来た
喫茶店に行こうと
思ってるんだが、
とわ子も行くか??」
喫茶店??
わ、レモネードが
飲めるかしら!
「行く行く、
私も行く!」
こうして、3人で
一緒に喫茶店に
入ることになった
のだけれど。
兄上は、テーブルに
通されるや否や、
「あっ!!」と
声をあげた。
「しまった!!
今日は落窪教授と
お会いする約束を
していたんだった!!
すまない、俺は
大学に戻るから、
あとは二人で宜しく
頼む!!」
えっ、え、え!?
「ちょっと兄上!?」
私が止めるまもなく、
喫茶店を出ていった兄上。
残された私と
雪彦さんは顔を合わせた。
「・・・・、
雪彦さん、
申し訳ありません、
兄がそそっかしくて。」
「大丈夫だよ。
慣れてるから。」
スクッと笑って、
雪彦さんは私が
座りやすいように
椅子を引いた。
「さ、とわ子さん、
どうぞ。
座ってください。」
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