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「そういえば、
とわ子さん、腕の
お怪我は大丈夫ですか?」
カチャ、とソーサーに
カップを置いて、
雪彦さんが訊ねてきた。
ああ、腕・・・。
「このとおり、
問題なくてよ。
痛みもほぼ引いたわ。」
雪彦さんはふっと
少し目を細めて笑った。
「もう、怪我しないで
くださいね。
御家族の方も心配
されたでしょう?」
ご家族っっ!?
思い出すのは、
昨日の父上との喧嘩。
私はレモネードを
飲みながらプリプリした。
「心配も何も、
叱られましたわよっ、
雪彦さんに迷惑を
かけるなって!!
そこから話が派生して、
縁談について父上と
大喧嘩です!!」
「えっ、
とわ子さん、縁談の
話が来ているんですか?」
目を丸くする雪彦さん。
私は「いいえ、まさか。」
と首を振った。
「父上は、結婚前の
女子がむやみやたらに
男性と話すと、縁談の時に
差し障りになるのでは
ないかと言ってるの。
今さらでしょう??
だいたい雪彦さんは
幼い時からよく見知った
仲なのにっ。
雪彦さんとお話
したら駄目だなんて
言われたら、私、
お部屋に篭城します!」
「…とわ子さん、」
困った様に笑う雪彦さん。
だって、だって
そうだもの。
雪彦さんと話したら
駄目だなんて言われたら、
盛大に反抗するわ。
「だいたい、
縁談で結婚するなんて
ナンセンスだと思いません?
これからの時代、
結婚相手は自由に
選ぶべきだわ。
私は絶対絶対絶対、
ぜっっっったい!
親が進める縁談相手とは
結婚しないんだから!!!
そんな縁談話、
蹴っ飛ばしてやるの!
だいたい、親に
進められるがまま
縁談相手と結婚する
男って情けないと
思いませんこと?
結婚相手ぐらい、
自分でちゃんと
見つけなさいなっ!!」
あらやだ、
私ったら熱が入って
しまって。
雪彦さんはちょっと
驚いて、
それから少し吹き出す
ように笑った。
「雪彦さん、」
「いや、とわ子さん
らしいなと思って。
自分の夫は、
自分で見つけますか。」
私はレモネードを
飲みながらコクン。
そして、一息ついた。
「でも、まだ
具体的にどんな方と
結婚したいかとかは
考えたことはなくて、」
「じゃあ、」
雪彦さんは、
静かに、穏やかに、
透明感のある声で、
言った。
「僕のお嫁さんに
なりますか?」
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