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「そ、
そういうことは!!」
私は、弾けるように
立ち上がった。
なぜなの、
顔が熱い。体が熱い。
胸が、バクバクする。
「か、軽々しく
言っちゃいけないんだわ!
私、これで失礼します!」
荷物を引っ掴んで、
お金を置いて、
慌ててテーブルから
離れようとすると、
「すみませんっ、
とわ子さん、
不愉快にさせて
しまいましたか・・・?」
って、不安げに、
雪彦さんが訊ねてきて。
不愉快、とは、
違うの、この気持ちは。
「っ、
不愉快、
じゃありませんっ、
ごきげんようっ、
また明日!!!」
これが、今の私の精一杯。
私はブーツをカツカツ
鳴らして喫茶店を出た。
火照った顔に、
ひんやりした風が
あたって、
私、わたし、
どうしちゃったのかしら、
おかしいわ、
こんなの、
こんなのって。
風が吹いて、
髪が揺れる。
雪彦さんが好きだと
言った長い髪が、
リボンと一緒に。
――――――――
――――――――――――
「珍しく大人しいですね、
お嬢様。」
夜。
ベッドに入ると、
ばあやが物珍しげに
言ってきた。
なによっ。
「ちょっと考え事が
あるの。」
「まあ、何事も
快刀乱麻なお嬢様が
珍しいこと。
ではお休みなさいませ。」
ばあやはベットサイドの
ランプの明かりを落して
部屋を出ていった。
暗い部屋で、私は
思い出す。
雪彦さんのことを。
雪彦さんのことを
考えると、胸が
ぎゅーーーっとなるの。
おかしいわ、
こんなのおかしいわ。
この数日で、
私なにか変わって
しまったのかしら。
だって、つい最近まで
雪彦さんのこと、
こんなふうに思ったり
しなかったのに。
『僕のお嫁さんに
なりますか?』
雪彦さんの、
お嫁さん・・・・・
って、私、
何考えてるのっ、
しかも何ときめいてるの!
でも、だって、
こんなこと言われたら、
想像してしまうわ。
雪彦さんの、
お嫁さんになる未来を。
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