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「とわ子、嬉しそうね。」
次の日の学校。
周りの友だちに言われて
私は思わず照れ笑い。
だって、今日はこのあと、
雪彦さんとお会いする
んだものっ。
そのために着物だって
下ろしたてのを選んだわ。
「そうかしら、
ふふっ、」
あ、だめ、私って
きっと思ったことが
隠せない人間ね。
でもいいわ。
さて、雪彦さん、
一体何のお話かしら。
学校が終わって、
私は大急ぎで荷物を
まとめて教室を出た。
「ごきげんよう、
また明日!」
さあ、早く雪彦さんを
お迎えに行かなきゃっ。
パタパタと学校を出て、
大学への道を急いでいると、
向かいから、
「とわ子さん!」
と、聞きなれた声が
聞こえてきた。
「雪彦さん!」
私が声をかけると、
雪彦さんはこちらに
向かって走ってきて。
「すみません、
とわ子さんっ、
僕が迎えに行きますからと
黎之助に言えば良かった
ですね!」
雪彦さんはペコリと
頭を下げて笑った。
その笑顔に、ドキドキ。
そういえば、まともに
お話するの、何日ぶり?
いつも顔は合わせてるけど、
ここのところ恥かしくて
「ごきげんよう」って
ご挨拶しかしてないもの。
「雪彦さん、
お話って何かしら。」
私が訊ねると、
雪彦さんは静かに
目を伏せて笑った。
「・・・少し、
歩きましょうか。」
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近くの川沿いの道の
木々が、綺麗に赤く
色付いていたので、
私たちはそこを並んで
歩いた。
隣を歩く雪彦さんは
穏やかな顔で前を
見つめてて、
どうしたのかしら、
もったいぶって。
「雪彦さん、
お話ってなぁに?」
私が訊ねると、
雪彦さんは黒いマントを
風に揺らして、
ふっと立ち止まる。
それにつられて、
私も立ち止まった。
「・・・・雪彦さん?」
「今日は、
とわ子さんに2つ
話したいことが
あります。」
2つ・・・・・・?
サワッと、風で
着物の袂と、髪が
なびいて、
私はこくっと
息を飲んだ。
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