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「なにかしら、
2つって。」
雪彦さんが何を
話すつもりか、
分からない。
分からないけど、
何かをこころなしか
期待している自分。
雪彦さんは、
ゆっくりと私の方に
体を向けた。
「とわ子さん。
この度、僕は、
縁談を受けることに
なりました。」
雪彦さんの言葉が、
一瞬理解出来なくて。
理解出来た瞬間、
さっ、と血の気が引いた。
縁、談・・・・・
え、
雪彦さん、結婚して
しまうという、こと?
「どなた、とっ、」
口をついて出てきたのは、
この台詞。
雪彦さんは静かに笑う。
「聞いていません。
聞いたところで、
断れるものでもないので。」
私はジリ、と後ずさりした。
うそ、嘘。
雪彦さんが、他の
誰かと結婚してしまう、
うそ、
嘘でしょう・・・・!?
「雪彦さん、」
「これが1つ目の話です。
2つ目の話は、」
雪彦さんは角帽を脱いで、
恭しく頭を下げてきた。
そして、ゆっくりと
顔をあげる。
「とわ子さん。
僕は、とわ子さんが
好きです。
とわ子さんを、
愛しています。」
ああ、どうして。
どうして、今、
このタイミングで。
愛してるだなんて。
・・・・・ひどい。
ご自分は、他の方と
結婚されるくせに・・・!
涙が、溢れた。
「雪彦、さん、」
「すみません、
こんな時に、いきなり
勝手なことを言って。」
雪彦さんは淡々と
言葉を紡ぐ。
そうじゃない、
勝手とか、そういう
ことではないの、
ちがうのっ、
悲しいのよ・・・・・!!
「とわ子さん、
聞いてください。」
雪彦さんは真っ直ぐに
私を見た。
「もし、
とわ子さんが
僕と同じ気持ちで
いてくれるなら、」
雪彦さんは、
いったん視線を落して、
そして、唇を噛む。
いてくれるなら、
何なの・・・・・?
「雪彦さ、」
「もし、
僕と同じ気持ちで
いてくれるなら、
僕と、
駆け落ちしてください。
僕はとわ子さんの
ためなら、
家を捨てます。」
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