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「お嬢様?
どうされました?」
とぼとぼと私が
歩いていると、
ばあやがやってきた。
「・・・・・・、」
なんて言えばいいのか、
分からなくて。
すると、ばあやは
私の頭をゆっくりと
撫でた。
「お部屋に白湯を
お持ちいたしましょう。」
*************
「ねぇ、ばあや。」
ベッドに座って、
私は白湯の入った器で
指先を温めながら、
ぽつりと、口を開く。
ばあやは優しげな
表情で「はい?」と
返事をした。
「どうして、
縁談なんかで
結婚しないと
いけないのかしら。
・・・どうにかして、
やめてもらうことが
できないかしら。」
雪彦さんの縁談を
なかったことに
できないの?
どうにかして、
縁談を止められないの?
私は、雪彦さんと
一緒にいたい・・・・!
雪彦さんが好きだもの。
今さら気付いたのが
いけなかったの?
もっと早く気付いて、
父上に言えばなんとか
なったかもしれないの?
ああ、いくら後悔しても
もうどうしようもない。
駆け落ち、
する・・・・・・?
「・・・・お嬢様が、
今、このように恵まれて
安定した生活ができるのは、
お嬢様のお父君、母君、
お祖父様、お祖母様、
さらにその上の方々が、
縁談で婚姻関係を
結ぶことで、
家を守ってきたからで
ございますよ。」
ばあやが、私に優しく
話しかけた。
私はばあやの顔を見る。
「ばあや、」
「自分たちよりも
下の代の者が苦労する
ことがないように、
自分の家を、家族を
守れるように、
婚姻で然るべき家と
結び付きを作らねば
ならないのです。
何かあったときに、
助けてもらえるように。
もちろん、向こうに
何かをあったときは
こちらが助けます。
もし、勝手なことを
してしまっては、
お家が傾いてしまう
かもしれない。
それでは今まで
ご先祖さまが守って
下さった家を潰して
しまうかもしれません。
自分の子どもたちの代が
苦しむかもしれません。
そんなことがないように
当時の情勢や家の金銭的な
状況、家柄などを考えて
婚姻関係を結ぶのです。
わかりますか、
お嬢様?」
私が、今こうして
何不自由なく暮らせるのは、
私よりも上の代の方々が
家を守ってきてくれたから。
家が、
私を守っているから。
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