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「・・・・・っ、」
ばあやの言うこと、
分かる。
私はこくりと頷いた。
・・・・だから、
私も、守られる立場から、
家を守る立場に、
いつかならないと
いけない。
下の世代のために。
そしてそれは、
私だけじゃなくて、
雪彦さんも一緒。
ううん。
むしろ、雪彦さんの
方がその使命は強い。
だって、雪彦さんは
長男で、正峰家の跡取り。
正峰家には、
他に子どもがいない。
雪彦さんが駆け落ち
すれば、
正峰家は、
おそらく潰れるでしょう。
潰れなかったとしても、
本家の血筋は絶える。
「そう、ね。
・・・・分かるわ。」
分かる。
・・・・・・分かる。
わ か る。
「ばあや、
白湯、ありがとう。」
私は器をばあやに返した。
雪彦さん、
好きよ。
―――――――――
―――――――――――――
次の日。
私は学校終わりに
約束の川沿いの並木道に
行った。
そこには、すでに
雪彦さんが待っていて。
「とわ子さん、」
赤い落ち葉の散る中に、
黒いマントを揺らす
雪彦さん。
私はキッと前を見る。
「ごきげんよう、
雪彦さん。」
私が挨拶すると、
雪彦さんはいつもと
同じ、穏やかな笑みを
浮かべた。
「こんにちは、
とわ子さん。
・・・・お返事を
いただけますか?」
「ええ。
そのために来たもの。」
雪彦さんに、
お返事をするために。
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