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「私も、
雪彦さんに2つ
お伝えしたいことが
あります。」
雪彦さん、
雪彦さん。
私は、雪彦さんの
ことが好きよ。
それは、絶対よ。
雪彦さんはただ黙って、
私を見つめるだけ。
私はこくっと息を飲んだ。
「私は、
雪彦さんと駆け落ちは
しません。
ごめんなさい。」
言った。
私、言った。
今この瞬間、
私は雪彦さんと一緒に
なる道を自ら閉ざしたの。
雪彦さんは、儚げな、
切なそうな表情を浮かべた。
「そう、・・・ですか。」
「雪彦さんが駆け落ちを
すると、正峰の家が、
今まで雪彦さんを
守ってきた正峰の家が、
潰れてしまうかも
しれません。
・・・・私一人のために、
そんなことしては、
だめ。」
『雪彦さんっ、
だめなのよっ、
そんなふうに、
ずっと家の中に
閉じこもってたら!』
小さい頃からこうして、
『だめ』って雪彦さんを
注意することが幾度となく
あった。
そのたびに雪彦さんは、
『とわ子さん、
そうだね、』
って笑ってくれた。
でも、今は、
笑ってはくれない。
雪彦さんは、ただ
切なそうな顔をしてる。
「とわ子さん、」
「私たちが勝手な
ことをしたら、
みんなが困ってしまう。
これからの人たちが、
困ってしまう。
だから、
駆け落ちはしません。」
雪彦さんは、
何も言わない。
私は唇を噛んだ。
「これが1つ目です。
2つ目、は、」
2つ目、は。
私は真っ直ぐに
雪彦さんを見つめた。
「私も、雪彦さんの
ことが、大好きです。
雪彦さんが私を
想うのと同じぐらい、
それよりも強いくらい、
雪彦さんが好きです。」
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