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「お嬢様・・・・」
家に帰ってから、
いっぱい泣いた。
部屋に閉じこもって、
いっぱい泣いた。
ばあやが心配して
扉の外から声を
かけてきたけれど、
それどころじゃなかった。
私、私、
分からない。
私のしたことは、
本当に正しかったのか
もはやそれさえも
分からなくなって、
分かるのは、
私は自ら愛する人と
一緒になる道を遮断
したこと。
自ら、好きな人を
突き放したこと。
いいえ、きっと
正しかったの、
だってそうしないと、
みんなきっと困ったわ、
だから正しかったの、
でも、私は雪彦さんの
ことが好きなの、
好きなの、
離れたくは
なかったの・・・!!!
それから、私の毎日から
“色”がなくなった。
何を見ても、
何も感じなくなった。
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―――――――――――――
「とわ子や。」
あれから、数日たって。
父上が声をかけてきた。
「とわ子、
最近元気が
ないじゃないか。ん?
何かあったのか?」
「・・・大丈夫です。
心配をおかけして
ごめんなさい。」
事実、私は元気が
なかった。
毎日に張合いもなくて、
ただ、流されるまま
生きている。
父上は私の顔を
覗き込んだ。
「とわ子、明日、
一緒に紅葉を見に
いかないか?
そうすれば、
少しは鬱々とした
気持ちも晴れるかも
しれない。
可愛いとわ子の元気が
ないと、私も心配だよ。」
父上・・・・・
「・・・・ええ。
では、ぜひ。」
何を見ても、
何も感じないわ。
でも、父上にこれ以上
心配をかけてもいけない。
私が頷くと、
父上は使用人に
目配せをした。
「父からのプレゼントだ。
受け取りなさい。
いつも和装のとわ子だから、
たまには洋装もいいんじゃ
ないのか?
明日はこれを着て
紅葉を一緒に見よう。」
使用人が持ってきた
白い箱の中には、
グリーンのワンピース。
大きな白い襟が
ぱっと目を惹く。
「・・・・・・、
ありがとうございます。」
どんなに美しい
ものを見たって、
どんなに着飾ったって。
あなたがいないのならば、
意味が無いわ。
私は会釈して、
自分の部屋に戻った。
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